奈留、久賀島に防犯カメラ 観光客増で治安悪化懸念 五島市検討 世界遺産構成資産

 長崎県五島市は、世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産がある同市の奈留島と久賀島で、定期船などが発着する港に防犯カメラを設置する方針だ。世界遺産登録の効果で島に出入りする国内や外国の観光客が増える一方、春には久賀島で教会施設の一部が何者かに壊されたとみられる事案も発生。治安悪化などを懸念する地域住民の要望や五島署からの提案が市に寄せられていた。
 カメラの設置場所は奈留島の奈留港ターミナルに2台、久賀島の田ノ浦港桟橋前に1台を予定。いずれも福江島などから観光客らが船で上陸している。市は開会中の定例市議会に設置費約150万円を提案し、本年度内の設置を目指す。
 市内の構成資産は「奈留島の江上集落」と「久賀島の集落」の2カ所で、それぞれ江上天主堂(国指定重要文化財)と旧五輪教会堂(同)がある。いずれも普段は人通りの少ない場所にあるが人気の観光地で、4~11月の来館者は、江上天主堂が1万428人(前年同期比5925人増)、旧五輪教会堂は1万1825人(同6173人増)と急増している。
 4月下旬には、旧五輪教会堂の2軒隣にある五輪教会で、祭壇にあったキリスト像のいばらのとげが数本折れているのを信徒の男性が発見。立ち入り禁止の祭壇に何者かが入った可能性がある。五輪教会は普段ミサなどが開かれる地元信徒の「祈りの場」であり、地域に動揺が広がった。
 地元の町内会は8月、防犯カメラの設置を求める要望書を市に提出。五島署も市に設置を働き掛けた。久田庄蔵副署長は「事件の抑止につながり、万一事件が発生した場合の捜査にも役立つ」と強調する。
 ただ今回検討しているのは港への設置で、文化財自体の出入りを監視するカメラではない。市は7日の定例市議会一般質問で、文化財の防災対策を問われ「人感センサーや防犯カメラなどの対策は、今後講じていきたい」と答弁している。

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