がん治療情報の選び方 標準治療の指針参考に

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医療機関のウェブサイトに掲載される虚偽や誇大な表示を監視する厚生労働省の「医療機関ネットパトロール」事業のホームページ。「医療広告ガイドライン」違反の疑いがあるウェブサイトの情報を一般が通報できる

 根拠が不確かながん治療を自由診療として高額で提供している医療機関が全国的に見られるため、日本医科大武蔵小杉病院(川崎市)の勝俣範之・腫瘍内科教授は「倫理的にも大変問題がある」と指摘しています。では、正しいがん治療の情報はどうすれば得られるのでしょうか。ポイントを聞きました。(高本文明)

 ─がんの治療では、どのような情報が信頼できますか。

 「医学情報の信頼度、エビデンスレベルが最も高いランクに位置づけられる情報源は優れた医学論文です。特に、新しい治療を受ける人と受けない人を無作為に分けて治療結果を比較する大規模な『ランダム化比較臨床試験』の結果が、最も信頼度が高いと言えます」

 ─治療法はいかがでしょうか。

 「現在の世界中の優れた医学研究から得られた科学的根拠に基づく、世界で最も優れた最善の治療が『標準治療』です。標準治療は、ランダム化比較臨床試験の最終段階の第3相試験までクリアした治療法であり、決して“並”の治療ではありません。一方、最新治療、最先端治療と呼ばれるものは、実験的・研究的な治療であり、まだ確立されたものではなく、最善の治療とは言えません」

 ─専門家の意見については、どう考えますか。

 「専門家とはいっても個人の意見にはさまざまなバイアス(偏り)がかかりますので、エビデンスレベルは最も低いです。私の意見も絶対視しないでください。患者の体験談も同様に惑わされやすい情報です。別の患者でも同じ治療で同じ効果が得られるか、効いたという客観的な証拠があるのか、体験談だけでは分かりません」

 ─どうしたら一般の人でも正しいがん治療の情報を得ることができますか。

 「各学会が作成した『診療ガイドライン』があります。ランダム化比較臨床試験など、エビデンスレベルの高い医学情報に基づいて病気の予防・診断・治療などの根拠や手順についてまとめた指針です。標準治療、すなわち最善の治療を紹介しています」

 「標準治療の診療ガイドラインは、日本医療機能評価機構の医療情報サービス『Minds(マインズ)』や各学会のウェブサイトなどで見ることができます。国立がん研究センターの『がん情報サービス』、NCI(米国国立がん研究所)が配信するPDQ日本語版も参考になります」

 ─怪しげな情報にひっかからないためには。

 「まず現在受診している医療機関の医師に相談しましょう。また、質の高い専門的ながん医療を提供する『がん診療連携拠点病院』には、がん相談支援センターが設置されています。だれでも無料で相談できます」

 ─医療広告については。

 「医療法に基づく医療広告ガイドラインが掲載ルールを定めており、医療機関のホームページも医療広告に該当します。禁止される広告として、未承認医薬品による治療広告、虚偽・誇大広告、治療上の体験談、治療前後の写真などがあります」

 ─怪しげな情報を見つけたら。

 「厚生労働省のウェブサイト『医療機関ネットパトロール』は医療機関のサイトに掲載される虚偽や大げさな表示を監視する取り組みで、問題があれば是正を求めています。一般の方も、専用の窓口から通報できます」

 「本来、研究として行われるべき医療行為が自由診療として特段の規制もなく行われている日本の現状は、倫理的にも大変問題があります。患者さん、家族の方々も正しい医療情報を見極められるよう知識を身につけていただきたいです」

◇かつまた・のりゆき 富山医科薬科大医学部卒。国立がん研究センター中央病院に20年勤務した後、2011年に日本医科大武蔵小杉病院で腫瘍内科を立ち上げた。日本臨床腫瘍学会指導医、日本癌治療学会がん治療認定医。55歳。

(2018年12月12日付 熊本日日新聞夕刊掲載)