ネットで炎上すると保険がおりる!?話題の「ネット炎上保険」について話を聞いてみた。

こんにちは。保険ライターの紳さんです。

皆さんはネットで炎上したことはありますか?

(僕はあります、何度も)

近年、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の普及に伴い、ネットにおける情報の伝達力、拡散力は驚異的なスピードで成長を続けています。

しかし、誰でも簡単に情報発信できるようになった一方で、無視できないのがネット炎上のリスクです。

ネット炎上、嫌ですよね。ひとたびネガティヴなコメント(投稿)がつくと、連鎖反応的に批判、中傷などが寄せられ、炎上元の情報発信者は袋叩きにあいます。

個人ならば重めの精神的ダメージを負うぐらいで済むのですが、これが企業ともなると大変です。信頼の低下、ブランド力の低下、風評被害による中長期的な業績の悪化、株価への悪影響など、深刻な事態になることも考えられます。

インターネットのおかげで便利な世の中になった反面、情報発信の際には常に炎上の危険性があるのです……

ところで、ネット炎上保険というものがあることをご存知でしょうか?

話題のネット炎上保険とは?

「えっ!? ネットで炎上したら保険がおりるの!?」

そう思った方もいますよね。僕も、つい最近までこのような保険があることは知りませんでした。

一体、どのような仕組みで、どのような補償が受けられるのでしょうか?

実際にこの「ネット炎上保険サービス」を提供している、損害保険ジャパン日本興亜株式会社様にお話を伺うことができました。

日本国内最大手の損害保険会社さんですね!!

本日はよろしくお願いします!

よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

まさか、ネットで炎上したら保険がおりる時代になるとは思いませんでした。僕も入っておけば良かった……

このネット炎上保険って、ネットで炎上して心を痛めた人にお見舞金として300万円が支払われるとか、そういうことですよね?

いいえ。ぜんぜん違いますね。

え、違うんですか? じゃあ、フォロワー数×10円が支払われるとか?

そんな保険があったら、世の中のインフルエンサーは全員、加入しそうですよね(笑)

当たり屋のごとく、わざと炎上してお金をもらうとかできないんですか? なんだか金のニオイがすると思ったんですけど……

残念ながら、そういうタイプの保険では無いですね(笑)

(チッ)

冗談はさておき…

(本当に冗談だったのかな?)

このネット炎上保険ってどういう仕組みなんですか? 炎上の規模とかも正確に測定するのは難しいし、炎上の定義も定かではありませんよね?

実際に降りる保険金の額とかも、どうやって計算するのか……

順を追って説明しましょう。

弊社が提供しているのは、正確には「ネット炎上対応費用保険」というものです。

ネット炎上対応費用保険?

例えば紳さんは、万が一、ネットで炎上したらどうやって対処しますか?

スマホの電源を切り、強めの酒をストレートで2杯飲んで、寝ますね。

大炎上間違いなしですね。じゃあ、紳さん個人ではなく、紳さんが広報を務めている企業が炎上したと仮定します。どんな対応をしますか?

えー、どうすれば良いんだろう。個人の判断で会社に迷惑をかけるのは嫌だから、上司とか役員に報告、連絡、相談かな?

そのあと、スマホの電源を切り、強めの酒をストレートで2杯飲んで、寝ますね。

うん。その現実逃避をするクセを直しましょうか。

実はですね、炎上した場合、まずは「なぜ、炎上したのか?」という原因調査を行い、事実確認をするのが先決です。

それから、状況に応じて迅速かつ適切な対応を行うことが必要です。非があるなら認めて謝罪するとか、表現の誤解があるなら訂正するとか、再発防止のためにどういった対策をする予定なのかを発表するとか。

なるほど、勉強になります。

そして、企業の規模にもよりけりですが、炎上に対応するために費やすコストが発生しますよね? ネット炎上対応費用保険は、ご契約者である企業が「炎上に対応するために費用を支出することによって被る損害」を補償するサービスなんです。

あー!! そういうことか!! つまり、企業を対象とした保険ということですね。

ネットで炎上した際に支払うコストとは?

実際に企業が炎上すると、どんな費用が発生するんでしょうか?

電話対応のためにコールセンターを臨時で設置したり、原因調査や炎上の分析、炎上の拡散を防ぐために社内の従業員が対応した場合は残業代(超過勤務手当)が発生します。また、社内の従業員ではなく、外部からコンサルタントを呼んで対応する場合もありますね。

その他、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌などの各種メディアに対して広告掲載をし、炎上を沈静化させる場合なども考えられます。

うーむ、高くつきそうですね。ところで、ネット炎上対応費用保険に加入していれば、炎上対応の為に支払った費用が全額、補償されるのでしょうか?

縮小支払割合というのがありまして、100%ではないんです。でも90%は補償されます。

90%は嬉しいですね!

ちなみに炎上が原因で中長期的に業績が悪化したり、株価が下がった場合の損害はどうなります? とんでもない額になりそうですが、補償されますか?

いいえ。あくまで「炎上による損害」として明らかに認められた場合の話ですので、さすがにそこまではケアできていません。業績が下がったり、株価が下がったりする事が必ずしも「すべて炎上のせい」だと言い切れない部分がありますので。

あー、確かにそうですね。あくまで炎上対応の為に費やした費用をリカバリーしてくれるということですね。

ネット炎上の定義とは?

…ところで、重大な疑問が残っているんですけど。

なんでしょう?

そもそも、「炎上」ってどうやって判断するんですか? ここまでは炎上じゃない、ここから先は炎上、みたいな定義はあるのでしょうか?

はい。その炎上してる、してないの判断の基準として「緊急通知基準」というのを、保険に加入する段階でお客様と話し合って決めています。

話し合い、ですか?

例えば、A社という企業があったとして、SNSなどでA社に対するネガティヴなコメントが毎日平均して10個ぐらいあったとします。理想としては0が良いですが、一般に広く浸透しているようなサービスを提供している企業だと、なかなかそういうわけにいかないですからね。

ですので、A社の場合はネガティヴなコメントが10個ぐらいだったら「正常」とします。それがある日、100個ぐらいに増えてたら「異常事態」ですよね。企業さんによっては50個で異常だとする場合もありますし、30個で異常とする場合もあると思いますが。この、主にSNSや掲示板サービスなどに寄せられるネガティヴなコメントの数で、炎上しているという判断をするための根拠として、緊急通知基準を定めるんです。

なるほど、面白い(笑) だけど、毎日どうやってチェックするんですか?

弊社と提携してくださっている企業様が、24時間365日体制で平時における情報モニタリングを実施しているんです。これにより、「WEBリスクモニタリングサービス」の提供が可能になるのですが、ネット炎上対応費用保険に加入していただく方には、同時にこのモニタリングサービスの導入をお願いしています。

まぁ、既に別のモニタリングサービスを導入しているという場合は、そちらと連携して保険に加入していただくことも可能ですが。

へえ〜。そのWEBリスクモニタリングサービスとは、具体的にどんなものなのですか?

まず、ネガティヴなコメントだと判断するためのキーワードを設定していただき、そのキーワードが「お客様のことを指していると思われるワード」と共に登場していないかどうかをチェックします。

監視する対象のメディアに関しましては、様々なプランがありますので、お客様のご要望に合わせて設定します。主にTwitter、掲示板サービス、ブログ、その他メディアなどですね。

なるほど。例えばBという飲食店があったとしたら「B」というワードと共に「マズイ」「汚い」「店員の態度が悪い」などのキーワードが一緒に出てきた段階でカウントするわけですね。

そうですね。Bのあとに具体的な店舗名を設定する場合もありますし、Bのことを指していると思われる略称や俗語なども設定します。

基準を超えて異常な数のネガティヴなコメントが見つかった場合はすぐに緊急通知を行ってくれますし、異常がなかったとしても日次、あるいは月次でレポートとしてネガティヴなコメントがどれだけ寄せられたのかということを報告します。

めちゃめちゃ良いサービスですね、それ。保険とは別に考えたとしても良いサービスだ!

はい。元々はこのモニタリングサービスの需要が高かったことから、ネット炎上対応費用保険のアイディアを思いついたわけです。今やネット炎上を完全に防ぐということは難しい時代ですから、一刻も早く異常事態に気が付くことが大切ですね。早期検知です。

すごく勉強になりました! ネット炎上保険、いたって合理的な商品ですね!

……余談ですが、個人が万が一の炎上に備えるための「お見舞金制度」を取り入れたネット炎上保険とか将来的に誕生する可能性はありますか?

実はここだけの話、そういう個人向けのサービスを検討したことがあります(笑) 芸能人などは、一度の炎上でCMやドラマや映画などが公開中止になったりしますからね。その際に契約料の返還や違約金の支払いなどが発生するので、結構な損害が発生します。

まぁ、その個人向けのサービスのアイディアはボツになったんですけどね。

そういった炎上のリスクに備えて、保険に入りたいという方は多いんじゃないですか? どうしてボツになったんでしょうか?

倫理的に良くないと判断しました。「保険があるから大丈夫!」と考えて、意図的に炎上しようとするような方も出てきてしまうかもしれませんので。

本当だ。まったくもってその通りですね。

個人も企業も、万が一の炎上に備えることは大切ですが、まずは炎上しないように気をつけることがなによりです。

今回のネット炎上対応費用保険もそうですが、今後はますます、こういったITやWEB、サイバーセキュリティなどの観点から考えられた保険サービスというのが注目を集めると思います。その分野において、我々、損保ジャパン日本興亜はより一層、お客様の様々なニーズに合わせた商品開発に注力していきたいと考えております。

期待しています! 貴重なお話、ありがとうございました!

まとめ

「ネットで炎上すると保険がおりる」という話を聞いたときは、話題づくりのためのユーモア商品なのかな? と思っていましたが、実際はモニタリングサービスとセットで考えられた、WEBリスクに対応するための策として素晴らしいアイディアの保険サービスでした。

企業の不手際、従業員の不適切行為、顧客のクレーム、競合他社によって行われるネガティヴキャンペーン。炎上の火種は日常の至るところに潜んでいます。

ちょっとした油断が生むネット炎上は、今の時代は避けられないことかも知れません。

だからこそ、個人にしても企業にしても、情報発信をする際には細心の注意を払っていきたいですね!

万が一の事態に備える「ネット炎上対応費用保険」、とても勉強になりました。

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