自宅離れられない被災農家に個別仮設 北海道でトレーラーハウス25戸

被災者の農家に供給されたトレーラーハウス型仮設住宅。北海道安平町にて(画像提供:日本RV輸入協会)

農作業などの事情に応える

9月の北海道胆振東部地震の震源に近く大きな被害を受けた勇払郡厚真町・安平町・むかわ町で、地元で農業を営む被災者世帯などを対象に、自宅敷地内にトレーラーハウス型の仮設住宅を「個別供給」する試みが始まっている。トレーラーハウス型仮設住宅は平成30年7月豪雨で岡山県倉敷市で供給され、被災自治体が災害救助法の適用を受けて提供できる仮設住宅として定着しつつある。国の災害救助法が適用される仮設住宅が被災者世帯の敷地内に個別供給されるのは、全国で初めて。

北海道胆振東部地震では、震度7の厚真町、震度6強の安平町・むかわ町では、あわせて住宅で全壊305棟、半壊671棟と大きな被害が出た。これを受けて3町は、自宅が全壊・大規模半壊して居住できない世帯を対象に、借上型仮設住宅(みなし仮設と言われる民間賃貸物件)の申請募集、公営住宅、建設型仮設住宅ーの各形態を供給してきた。

このうち建設型仮設住宅は、北海道庁は主に大手住宅メーカーのプレハブ建築事業者でつくる一般社団法人・プレハブ建築協会と災害協定により、迅速に供給できる体制となっている。今回の地震でも、北海道庁は震災直後から被災自治体に仮設住宅の建設希望数をとりまとめ、9月18日までにプレハブ建築協会に第1期工事として130戸を発注。その後第2期工事で78戸を発注し、全部で208戸が発注され、年内の完成をめざす。

ただ今回3町では、稲作・メロン栽培・酪農などに従事する農家世帯が多いため、自宅が全壊・半壊しながらも「作物や家畜の世話で自宅を離れられない」という課題があった。第1期の入居募集をしたものの、プレハブ型住宅団地への入居をあきらめる世帯が多く、想定通りに入居者が決まらない事情があった。

こうしたなか第1期工事が始まる9月下旬、トレーラーハウス型仮設住宅を岡山県倉敷市に供給した実績のある安平町の地元事業者が町に提案を受けたことをきっかけに、3町で検討が始まった。10月11日には本州から安平町にトレーラーハウス2台持ち込まれ、被災者世帯向けに内覧会を実施した。建物は被災者から好評を得て、3町は北海道に採用を要請。北海道は、2016年の熊本地震、今年の西日本豪雨でも災害救助法を適用できる仕様としての実績を確認したうえで、トレーラーハウス型仮設住宅の採用が決まった。

今回は一般社団法人・日本RV輸入協会が供給を請け負い、第2期工事で15戸、第3期工事(最終)で10戸、あわせて25戸のトレーラーハウスが被災者農家の所有地に供給される。国の災害救助法の適用を受けた住宅が個別供給されるのは、今回が全国で初めて。

低コストも魅力

安平町では「被災した農家世帯に少しでも早く暖かい家で暮らしてほしい」と、12月4日、全7戸供給予定のトレーラーハウス型仮設住宅のうち3戸分を被災者の農家世帯に提供した。同町建設課は「被災した畑作農家世帯は、被災から3カ月傾いたままの家に我慢して住み続けていた方もいる。今後年内には全戸を完成させ、1日も早く温かい家に移り住んでもらいたい」と完成を急ぐ。

トレーラーハウス型仮設住宅の内部(画像提供:日本RV輸入協会)

トレーラーハウス型の建物はツーバイフォー工法。軽量鉄骨造のプレハブ型仮設住宅と同等。玄関には風除室も備える。窓は二重、断熱材を厚くして新省エネ基準を満たす。完成車両を持ち込むため、現地工事は上下水道・電気・ガスの各配管を接続するのみ。工期は数日~数週間で完了する。またプレハブ型の場合、建築費のほかに2年後には別途解体費用がかかるが、トレーラーハウス型は2年後は返却を基本としながら、希望があれば、被災者が買い取って住み続けることも可能。また町が買い取り、平時は簡易宿泊施設として移住支援や長期滞在型観光にも活用しながら、災害時は再び仮設住宅としても利用できる。

コストは北海道庁建設部によれば、プレハブ型が戸あたり約1200万円(建築・造成費含む)に対し、トレーラーハウス型が約340万円。安平町建設課では「今回トレーラーハウスの個別供給を認めてもらえたことは、今後北海道内で災害が起きた場合にもよい前例ができた。ただトレーラーハウスは供給量が限られているのが難点。今後の解決されることを期待したい」と話している。

■関連記事「トレーラーハウス型仮設住宅、倉敷市で50戸初採用」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/9118

(了)

リスク対策.com :峰田 慎二

© 株式会社新建新聞社