「大阪桐蔭の選手にプロで勝つ」履正社出身の明大右腕、悔しさバネに誓う雪辱

明治大学・竹田祐【写真:篠崎有理枝】

今春、履正社から明大に進学した竹田祐投手の今

 今年のドラフトで4球団が競合し中日に入団した根尾昂内野手や、3球団が競合しロッテに入団した藤原恭大外野手ら4名がプロ入りを果たした大阪桐蔭。2017年のセンバツ優勝、2018年には史上初2度目の春夏連覇を成し遂げるなど、圧倒的な強さを誇っている。その大阪桐蔭としのぎを削った履正社から今春明大に進んだ竹田祐投手は、高校の3年間「大阪桐蔭だけには負けられない」という思いを胸に練習に励んでいた。しかしその壁は厚く、3年間で甲子園は春1回、夏1回の出場に留まった。

 竹田は「大阪桐蔭を倒して甲子園に行きたい」という思いから履正社に進学。大阪桐蔭は寮生活だが、履正社は自宅通学。通学に1時間かかり、最初は時間の使い方に戸惑ったというが、次第にその生活にも慣れ、自分の時間も作れるようになった。しかし、1年の秋に思うように投げられず「辞めたい」と思う日々が続いた。

「2強だと思っています。絶対に桐蔭には負けられないという気持ちでいつも練習していました。でも、1年の秋に思うように投げられなかったときは『もう辞めるんかなぁ』と思いました。投げられなかったのでショートをやったんですが、大会で負けてどっちも中途半端になって。子供の時からずっとピッチャーだったので、いい経験かなと思ったんですが、どっちも上手くいかなくて、戻る場所がなくなってしまいました」

 悩んだ末に、食事やトレーニングで体を大きくすることを決意。2年春までに体重を10キロ増やしたところ、球速が140キロを記録し再びピッチャーとしてマウンドに立つことになった。そして、エースとして挑んだ3年春のセンバツ決勝で、3-8でライバルに敗退。リベンジを誓った夏の府大会準決勝で再び大阪桐蔭と対戦したが、4-3から7回に逆転を許し、9回に突き放され4-8の完投負けを喫した。

「春負けて、夏は絶対勝って甲子園に行こうってみんなで話していました。『絶対に桐蔭に勝つ』と思って練習して、桐蔭のことしか考えていませんでした。どうしても勝ちたかったんですけど、自分が打たれて最後に突き放されて負けて、みんなに申し訳なくて。最後の夏は絶対に甲子園に出たかったです。だからめちゃくちゃ悔しかった。その日は『負けたんかぁ』と思って、寝られなかったです」

「大学1年から投げる」目標をまずはクリア、3年後のプロ入り目指す

 竹田は府大会決勝も、甲子園も見ていない。大学で1年目から投げ、卒業後にプロに行くと決め、引退後も練習に明け暮れた。

「高校を卒業してプロに行きたいという気持ちはありましたが、レベルが足りないと思いました。センバツに出たときに、ほかのピッチャーが凄かった。自分は球速が伸びず、センバツでは140キロ出るか出ないかでした。なので、大学でレベルアップしてプロを目指そうと思い、引退後もずっと練習していました」

 高校2年の明治神宮大会決勝。履正社が優勝を決めた次の試合に出てきたのが明大だった。「プレーしている姿がかっこよかった」と、明大ナインに憧れ進学を決めた。そして今年、13試合に登板。高校3年の夏に誓った「大学1年から投げる」という目標を達成した。今はさらなる飛躍を目指し、球速のアップと変化球の精度を上げることに取り組んでいる。

「1年目からこれだけ投げられるとは思っていませんでした。投げさせてもらって、すごくいい経験ができています。要所でストレート、変化球で押さえられたのはよかったと思いますが、秋に勝てなかったときは悩みました。相手もすごいピッチャーが出てくるし、なかなか勝たせてくれない。ボールがちょっと甘いと打たれます。六大学のレベルの高さを感じました。春に向けて、チームの役に立ちたいと思っています。自分が投げたら勝てるピッチャーになりたい。そのために努力しています」

 履正社でともに戦った安田尚憲内野手は卒業後にロッテに入団した。かつてのチームメートの活躍はとてもいい刺激になっているという。また、今年のドラフトではその安田とロッテでチームメートになる藤原ら4名が大阪桐蔭からプロ入りした。

「1個下の学年ですが、すごい選手ばかりです。どんなところというより全部がすごい。夏に侍ジャパンU-18代表と練習試合があり、根尾や藤原を見ましたが、一年前に比べてレベルアップしていました。それを見て、自分も頑張ろうと思いました」

 夏の府大会で大阪桐蔭に負けたことは、今までの人生で一番悔しかったという。その悔しさが、つらい時を乗り越える原動力になっている。

「しんどい練習で自分が妥協しそうになったとき『負けたんだから頑張ろう』と思います。大阪桐蔭の選手にプロで勝ちたい。あの時の悔しさがずっとあります。いつかそれを晴らせるときがきたらと思います」

 高校時代、何度も目の前に立ちはだかった大阪桐蔭高の壁。その悔しさをプロで晴らすため、19歳の右腕は大学野球の舞台でさらなる成長を誓う。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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