企業の魅力争い激化 大学前の就活カフェでPR合戦、150社協賛

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大学前に店を構え、企業と学生をつなぐ「知るカフェ」の交流会。企業の採用担当者(右手前)に質問を重ねる学生たち=西宮市上甲東園3

 新卒者の内定率が90%台を記録し、大学生の就職活動は売り手市場が続く。学生優位の中、いち早く優秀な人材に自社をアピールしようと、企業や自治体がスポンサーとなった「就活カフェ」が大学のキャンパス前に続々と登場している。現行の「新卒一括採用」を見直す動きもあり、カフェは就活情報を求める大学1~2年生も訪れ、企業担当者らと学生が早期接触を図る場になっている。(名倉あかり)

 「どうして人事部に?」、「休日は何をしていますか」-。9月に関西学院大上ケ原キャンパス(兵庫県西宮市)前にオープンした「知るカフェ」の一角。無料のコーヒーを片手に、企業担当者と大学生の男女が座る。まるで採用面接のような会話が続くが、質問をしているのは私服姿の学生だ。

 カフェを運営するエンリッション(京都市)は全国の大学前などに、企業と学生をつなぐ17店舗の「知るカフェ」を置く。兵庫県内では関学前のほか、神戸大学前店(神戸市灘区)と、近隣に5大学が集まる神戸市営地下鉄学園都市駅(同市西区)の駅ビル内に開業。日系企業の現地雇用に応えようと、米国やインドに海外6店舗も展開する。

 協賛するのは国内外約150の企業と自治体。年間約300万円のスポンサー料を支払い、カフェで学生向けの交流会を開き、情報発信をする。兵庫関連では神戸市や神戸製鋼所、みなと銀行などが名を連ねる。一方、学生は企業の人事担当者らとの交流会で、福利厚生や給料の詳細、社内結婚の有無など、公式な説明会では遠慮しがちな「本音」の質問ができる。

 「就活カフェ」が増える背景には、就職活動の早期化もある。就職情報会社マイナビ(東京)によると、来春卒業の学生が採用情報を求めてエントリーした企業数は平均29・3社で、2年前と比べて16・4社も減少。会社説明会が解禁される3年生の3月での応募が大半で、志望企業は早期に絞り込まれている。

 11月、関西学院大前のカフェで学生と交流した住友金属鉱山(東京)の人事採用担当、若原大(だい)さん(28)は人材の争奪で「企業の『魅力度争い』が激しくなっている」と話す。

 経団連は今年、各社がほぼ同じ時期に新卒予定者を大量採用する方式を見直す考えを示し、ルール作りを政府に委ねた。若原さんは「通年採用になれば時間をかけて学生とマッチングができ、離職者の減少につながる」とも指摘する。

 一方、学生側は不安に駆られる。1年生ながら交流会に参加した同大経済学部の女子学生(19)=奈良県桜井市=は「就職活動の最新の情報が欲しかった」と言う。就活ルール廃止のタイミングに振り回されるのを気に掛け、「採用日程が自由になれば、全学年がライバル。1年生から就活を始めておかないと」と焦りを口にした。

■通年採用、日本になじむか

【著書「『就活』の社会史」がある関西学院大社会学部長の難波功士教授(57)=文化社会学=の話】「新卒一括採用」をやめ、通年採用が進めば対応できる体力のある企業ばかりではない。また、「周りの人に合わせて動く」という日本の学生の気質になじむのかは疑問だ。就職活動がさらに前倒しになり、大学に入学後、就職のことばかり意識するのは学生、企業、社会にとってプラスになるのかを考える必要がある。