硬式転向4年目、女子プロ野球のタフネス右腕が明かす「人生で一番投げた」

埼玉アストライア・谷山莉奈【写真提供:日本女子プロ野球リーグ】

侍ジャパンでも活躍した谷山、女子プロ野球でリーグ最多投球回も悔しさ「不完全燃焼」

 女子プロ野球・埼玉アストライアの谷山莉奈投手は直球の球速が115キロ前後ながら、カーブ、スライダー、シンカーを操る技巧派右腕だ。

 春日部女子高ではソフトボール部、日体大では軟式野球部に所属し、硬球を握ったのはプロ野球選手になってから。そんな異色な経歴から1、2年目は最多ホールドのタイトルを獲得し、昨季は9勝2敗、防御率1.59で最優秀防御率のタイトルを獲得。今季は18試合登板し、6勝6敗、防御率2.59だったが、リーグ&自身最多94回2/3を投げた。硬式転向4年目で侍ジャパン女子日本代表に初めて選ばれた26歳に迫った。

――今シーズンを振り返って感じていることを教えてください。

「個人としては結果を出せずに悔しい思いでいっぱいです。持ち味である打たせてとる投球ができずに、思い通りのピッチングができませんでした。逆に長打を打たれることが多く、コントロールミスが多くありました。全体的にも歯がゆさだったり、不完全燃焼っていう気持ちが強いです」

――今季は最多投球回を投げましたが、普段からどんなコンディショニング方法を実践されていますか。

「野球人生20年間の中で一番ボールを投げたシーズンでした。とにかく1年間休むことなく投げ続けたんだなと感じています」

――コンディショニングに関しては、毎月治療院に通っていました。

「セルフケアは少しでも投げたらアイシングをして、次の日は一切ボールを投げずにランニングで調整していました」

――8月のW杯では自身初の代表選出。世界の選手を相手にした時に得たものはありましたか。

「世界の選手を相手にして、自分の力がどこまで通用するのか確かめることができた、いい経験になりました。海外の選手は長打力のあるバッターが多かったです。そんな打者に対して、コーナーを広く使った投球で三振数が多く取れたことは、改めてコントロールの重要性を身をもって感じることができました」

硬式転向4年目で侍ジャパン入り「どこまで自分が通用するのか」

――これまでの野球歴を教えていただけますか?

「小学校1年生~6年生は軟式野球、中学1年生~3年生はソフトボール、大学1年生~4年生で軟式野球をしていました。中学生に上がる時は、男の子との体格差が出てくることもあり、とにかく試合に出たかったのでソフトボール部に入部しました」

「日体大時代は他のスポーツをやってみようと思っていたのですが、体験入部で大学日本一を誇りながらも初心者でもレギュラーを目指せたり、学生コーチによる指導などの環境に魅力を感じて入部しました。プロを目指すきっかけになったのは、大学の同期や先輩が入団テストを受けていたことも大きかったのですが、一番は自分もどこまで通用するのかという挑戦と、野球を続けたいという気持ちが強かったからです」

――硬式球に変わった時の苦労は無かったですか。

「硬式球の重さに初めは慣れなかったけど、それよりも周りの選手のレベルの高さに圧倒されたことが1番印象的でした。本当にここでやっていけるのか自信もなかったし自分の良さも全く見失ってしまい、1年目の前半はかなり辛かったです。そんな中チームメイトや指導者に支えていただけたあの時の経験は今の自分の大きな財産だと思っています」

――シーズン通して一番印象に残っている試合を教えてください。

「7月16日の神宮球場での愛知ディオーネ戦です(8x-7でサヨナラ勝ち)。初回に打線の大量援護があったのに自分のピッチングが振るわず逆転されてしまい、マウンドを降りる形になりました。でも変わった投手陣が踏ん張ってくれ、打線の援護もあり、苦しい試合展開の中でチーム一丸となって勝つことのできた試合です。特に大学の先輩である山崎選手に今シーズン初勝利を与えられたことは、個人的にも嬉しかったです」

――来シーズンに向けての意気込みを教えてください。

「技術と体力面でのレベルアップを目指します。今シーズンは特にスタミナ不足が課題に上がりました。基本的なスタミナ面はもちろんですし、体幹が弱く投げていて上半身と下半身との連動がうまくいかずにフォームが安定しませんでした。土台が安定せず、自分の生命線のコントロールが定まらなかったのはとても苦しかったです」(Full-Count編集部)

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