多様な学び直しの場へ 松戸に夜間中学「みらい分校」来春開校 法施行後初、市教委手探り

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松戸市のNPO法人が運営する自主夜間中学校で学ぶ生徒ら=松戸市

 松戸市は、夜間中学「市立第一中学校みらい分校」の来年4月開校に向け、準備を進めている。自治体に就学機会の提供を義務付けた「教育の機会確保法」施行後初の開校となり、その動向に注目が集まる。ただ、教員配置や入学者数の見通しが立たないなど準備は手探りの状態。関係者は期待と不安で新たな取り組みの船出を待ちわびている。

(松戸支局長・伊藤幸司)

 11月末の夕方、松戸駅近くの市勤労会館。教材やノートを手に私服の学生たちが集まり出した。NPO法人「松戸市に夜間中学校をつくる市民の会」(榎本博次理事長)が運営する自主夜間中学校。退職教員や元会社員など25人ほどのボランティアが講師を務め、週2日開講している。

 市内に住む男性(36)は2年ほど前から通い、数学と英語を学んでいる。2年次途中から不登校となった中学校は形式的に卒業。基礎学力がないことで生きづらさを感じていたという。

 「勤務先で反省文を思うように書けなかったり、自分の考えをうまく言葉にできなかったり。つらい思いをした」

 小学5年の算数の復習から始まり、学習は中学3年の数学へ進んだ。「パソコンの取扱説明書がすらすら読めるようになった。学びはとてもおもしろい」と手応えを感じている。

 松戸市の夜間中学校では2年次から学び直すつもりだ。「人との出会いも得られる」と期待をかける。一方、市教委との面談で教員体制や入学者が未確定と聞いた。教科ごとに受講する学年を変えられるのかも分からず不安を抱えている。

◆80自治体が新設検討

 夜間中学は貧困や障害、不登校、国籍などさまざまなハンディを抱えながら学び直そうとする人たちに、義務教育を受ける機会を保証する役割が期待されている。

 文部科学省が昨年公表した調査結果では、夜間中学の新設を検討・準備している自治体は80。具体的な時期が決まっているのは松戸市と川口市(いずれも来年4月)だった。新設は30数年ぶりという。

 市教委によると、7月から始めた生徒募集には8月末までに24人が応募。募集前の無記名調査では58人が「通ってみたい」と答えており、それに比べ出足が鈍っている。市教委は期限を設けず条件にあえば生徒を受け入れる方針だ。

 ただ、松戸市立中学校の教員配置は千葉県の権限。現時点で同市教委に予定数などは示されていない。教育環境の輪郭が見えないことが応募に踏み切れない理由とも考えられる。

◆「全国のモデルに」

 入学資格は義務教育の年齢を超えた満16歳以上で原則市内在住の人など。国籍は問わない。県内の他市から入学を希望する場合は地元の市教委が了解する必要がある。

 榎本理事長は「ようやくの開校だが、救われる人はたくさんいる」と待ちわびる一方、「在住に限らず在勤者であれば入学できる自治体もある。閉鎖的ではなく全国のモデルとなる学校を作ってほしい」と望む。

 松戸市の自主夜間中学では近年、中国や東南アジアなど外国人の生徒が増加。スタッフの中には中国語の分かる人もいる。

 市立夜間中学でも外国籍の生徒への対応が求められそうだが、市教委は「課題なく開校できるとは思っていない。セーフティーネットを少しずつ作っていく」と説明。「市立夜間中学ができるとの情報を広く伝え、応募者を掘り起こしたい」としている。