アストンマーチン、『ヴァルキリー』用V12エンジンを初公開。1万回転超で1000馬力発揮

 アストンマーチンは12月12日、レッドブル・レーシングと共同で開発中のハイパーカー『アストンマーチン・ヴァルキリー』のパワートレインを構成する6.5リッターV12自然吸気エンジンを公開した。

 アストンマーチンが“究極のロードカー”と唄うヴァルキリーは、サーキットで最高のパフォーマンスを発揮すると同時に公道走行も可能としたハイパーカーだ。

 現在も同社とレッドブル・レーシングによって開発が進めてられている車両のデザインは“空力の鬼才”の異名を持つエイドリアン・ニューウェイが指揮。エアロダイナミクスを最大限に利用することで量産車離れしたそのエクステリアは見る者を圧倒する。

 そんなヴァルキリーの心臓部には1000馬力を発揮するV12エンジンが搭載されることがすでにアナウンスされていたが今回、このエンジンの詳細が明らかにされた。

 ヴァルキリーのコクピット後部に収められるのはコスワースとアストンマーチンが共同開発した6.5リッターV12自然吸気エンジンで、その最大の特徴はピークパワーの1000馬力を、エンジン最大回転数の11100rpmをわずかに下回る10500rpmという領域で発生する点だ。

 ピークトルクはエンジンのみで740Nm/7000rpmを発生し、後日発表される予定のハイブリッドシステムがこれをアシストするとみられる。この他、Vバンク角は65度、フルストレスマウントのエンジン重量は206kgというスペックが明らかにされている。

 この206kgという重量を市販車の排ガス規制と耐久性の目標プログラムをクリアしながら達成するには多数の苦労があったといい、これには時間の経過による特性の変化が証明されていない、特殊合金素材の使用を避けたことも理由のひとつになっているという。

アストンマーチンとコスワースが共同開発したヴァルキリー用6.5リッターV12自然吸気エンジン
進行方向右側のエキゾーストマニホールド

 そうしたなかでアストンマーチンとコスワースは、エンジンブロック、シリンダーヘッド、サンプなどに鋳造部品を採用。F1用エンジンと同仕様のチタン製ピストンを含む、エンジン内部のコンポーネントについては工作機械での削り出しとなっている。

 また、もっとも骨を折った開発部品はビレット加工のクランクシャフトだという。このパーツでは直径170mm、長さ775mmのスチール棒を削り出したのち、熱処理、機械仕上げ、再熱処理、研磨、最終仕上げという工程が踏まれる。こうして生まれた新型エンジン用クランクシャフトは、アストンマーチンOne-77のV12エンジンに採用されているものより約50%の軽量化を達成した。

「この時代における、もっとも印象的なクルマに組み込まれるNA V12エンジンを開発・製造するように求められたことはコスワースにとって大きな誇りだ」と語るのはコスワースのマネージングディレクターであるブルース・ウッド氏だ。

「パワー、重量、排ガス規制のパス、そして耐久性などの詳細について話し始めたとき、他にはないような挑戦であることを理解した」

「我々とアストンマーチン、レッドブルによる素晴らしいパートナーシップは各社が明確なビジョンを打ち出している。これは、過去に例のないロードカーのエンジンを供給するためには不可欠なことだ」

 また、アストンマーチンのアンディ・パーマーCEOはヴァルキリーに搭載される新型エンジンついて次のように語っている。

「血液中にガソリンが混じっているような(熱狂的なクルマ好き、モータースポーツファンの)人々にとって、V12自然吸気エンジンの発する高音質のサウンドは絶対的な魅力のひとつだ。これ以上に内燃機関の感情や興奮を完全に包括するものはないと言っていいだろう」

「コスワースの開発チームは当初から、ひるむことなく我々が設定したベンチマークに挑戦してくれた。彼らは可能な限り上限を引き上げその結果、異常とも言えるエンジンが完成したんだ」

コスワースとアストンマーチンが共同開発したヴァルキリー用6.5リッターV12自然吸気エンジン
コスワースでのベンチテストの様子

© 株式会社三栄