落語で生きづらさ解消 「ツレうつ」著者がコミックエッセー

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「きっとお気に入りの演目が見つかるはず」と話す細川貂々さん=宝塚市梅野町

 兵庫県宝塚市在住の漫画家、細川貂々(てんてん)さん(49)が、落語の楽しみ方を指南するコミックエッセー「お多福(たふく)来い来い」を出版した。オチが理解できなかった初めての寄席から、落語を通じてネガティブな自分の性格を受け入れるまでをユーモアを交えて描く。細川さんは「生きづらさを感じている人にこそ落語の醍醐味(だいごみ)を知ってもらいたい」と話す。(貝原加奈)

 細川さんは1969年、埼玉県生まれ。夫がうつ病になったのをきっかけに描いたコミックエッセー「ツレがうつになりまして。」(幻冬舎刊)がベストセラーになった。2008年に長男を出産。11年には宝塚歌劇好きが高じ、家族で千葉県から宝塚市へ移り住んだ。

 今回の本は17年8月から半年間、女性週刊誌に連載したエッセーが基になった。これに落語好きの「ツレ(夫)」が面白さのツボを加筆して完成させた。

 落語に詳しい知人に連れられ、上方落語に初めて触れた細川さん。客席が沸く中、「何が面白いのか」と戸惑う自分を包み隠さず描く。それでも寄席に足を運び、息子を落語クラブに通わせるうち、少しずつ落語が身近になっていった。

 本で紹介するのは、古典落語の名作24演目。細川さんが引かれたのは、役者といたずら好きの子ダヌキのやりとりを描く「まめだ」。江戸時代の情景が浮かぶ語り芸や、客席も一体となって楽しむ雰囲気に「涙が出そうになった」という。

 「どうせ私なんて何をやってもうまくいかない」。ネガティブな性格だった細川さんを変えたのも落語だった。「牛ほめ」では、手本通りに他人の牛を褒められず、正反対のことを言ってしまう主人公に引きつけられた。「主人公は愛すべきダメ人間が多い。私も、このままでいいんだと思えた」。上方落語の「時うどん」と江戸落語の「時そば」のように、関連する演目でも東西で題材などが変わる面白さも取り上げる。

 落語クラブに通う小学5年の息子もすっかりはまり、既に2演目をマスターしたとか。人前で堂々と披露する息子に、涙するツレの様子もくすっと笑える絵で伝える。

 本のタイトルは、寄席の開演を知らせる二番太鼓が、客の多幸を願って「お多福来い来い」と聞こえるように打ち鳴らされることから取った。細川さんは「寄席に足を運び、幸も不幸も笑いに変える落語の登場人物から、幸せの招き方を学んでほしい」と話している。223ページ。小学館刊、1296円(税込み)。