『情報戦争を生き抜く』津田大介著 ソーシャルメディアの最前線

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 IT方面に乗り遅れているという不安から、ついこういう本を手に取る。ネットメディアの第一人者が2016年から週刊誌に連載したコラムを大幅に加筆。ソーシャルメディアをめぐる世界の最新情報がぎっちり詰まっている。

 やはり事態は予想を超えていた。米国やフランスの大統領選にロシアがフェイクニュースで世論工作を仕掛けたことは知られているが、フェイクニュース作りで稼ぐサイトが相次ぎ、「新たな産業」になっている。かと思えば、デマを打ち消す情報を拡散するサービス業も現れた。

 先入観が次々覆された。ネット炎上は若年世代が煽っていると思っていたが、年齢が高いほど過激な意見を持つという研究結果が出ている。ネットで多様な意見に接する若年層のほうが主張は穏やかで、ネット情報の信頼性にも懸念を抱いているという。

 フェイクニュースやヘイトスピーチは野放し状態にも見えるが、欧米の政府機関やネット広告主の企業、ポータルサイト、メディアが次々規制に乗り出した。

 新聞などの旧メディアは衰退の一途をたどる一方で、海外の大手新聞社には寄付金やクラウドファンディングで調査報道を実現した例がある。虚偽情報やスキャンダリズムへの反動か、じっくり腰を据えた「スロージャーナリズム」「建設的ジャーナリズム」が若者を中心に支持を集めている。

 「情報戦争」は本物と偽物のせめぎあいでもある。情報の汚染によって私たちは否応なくメディアリテラシーを鍛えられている。

(朝日新書 910円+税)=片岡義博