お気に入りのダウンジャケットをもっと暖かく。 身近な「アレ」を使えばダウンはふわふわに。

水鳥の胸部から採れるダウン羽(出典:写真AC)

全国で急に寒くなったという声が増えています。
寒くなるとお約束のようにダウンを着る方が増えますが、まだまだ雨や雪、風の強い日に着ている人も多いですよね。以前も書いたのですが、それは逆効果です。詳しくは以下、過去記事をご覧ください。

■ダウンジャケット、たくさん服を着こんだ上に着てませんか?ダウンは体温で温めて羽をふくらませるもの。肌に近い方が暖かい!
(2016年11月4日付記事)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2109

ダウン(down)とは、水鳥の胸部から採れる羽根軸をもたない羽根のこと。このタンポポの綿のような羽根が空気をたっぷり蓄え、動かない空気層をつくります。空気は自然界最強の断熱材であることから、このダウンを身にまとう「ダウンジャケット」は、厳寒の季節を温かく過ごすための必須アイテムといえます。
ただしこのダウンジャケット、着方を間違えると、せっかくの温かさを発揮できません。なぜでしょう?

それは、羽根がいかにして空気を蓄えるか、また、水鳥の行動パターンをみればピンときます。水鳥は、体温を羽根に伝えて、羽根自体を膨らませていますよね。だから冬にぽわぽわになっています。

水辺で草を食むカナダグース。そのダウンは高品質で知られる(出典:写真AC)

では人の場合はどうでしょう。
人の場合、外から暖房があれば、ダウンの羽根は膨らむので、通勤の電車での移動など暖房のあるところでは、体温にかかわらず、ダウンジャケットは暖かい服でいられます。

ところが、災害時やアウトドア、暖房がない場合はどうでしょうか。熱源は鳥と同様、自分の体温のみになります。その場合、ダウンジャケットは、厚手のセーターなどを着た上に着るよりも、薄着のまま肌の近くに着ている方が、熱源に近づくので羽根を膨らませることができ、暖かい服になります。もちろん日常でも、ダウンジャケットをもっとも効率よく暖かく着るコツは、肌の近くに着ることなのです。

ダウンの特性を知り、天気で使い分ける!

このように動かない空気層を作り、暖かくする性質のダウンですが、一つ大きな弱点があります。それは、水にとても弱い、ということです。

鳥は身震いすることで、水分を散らすことができますが、人は、それができません。また、鳥は羽根の油分で水を弾いています。製品化されたダウンにも、油分が適度には入っているのですが、油が多いと臭ってくるので、適度以上は汚れとして除去されています。

だから、鳥が通常身につけている状態ほど水に強くありません。そんなわけで、水に濡れると羽根はしぼんでしまい、動かない空気層をつくれなくなるので、全く暖かくない服になってしまうのです。

いまだにテレビのニュースキャスターの方が、雪の日に分厚いダウンジャケットを着込んで傘もささずに「寒いです」と報道されている場面があります。でも、水分をダウンに含ませている状態では寒いのは当たり前。「その服だから・・・」とつい思ってしまうのです。

おまけですが、ダウンをお洗濯しすぎてしまうと、この適度な油分まで落としてしまい、ダウンの性能を下げてしまいます。このため、油を落としすぎない専用洗剤が推奨されています。

では、風が強い場合はどうでしょう。
表生地の防風性能にもよるのですが、一般的にはダウンがしぼんでしまいがち。これはダウンを包み込む表面の生地から冷たい風を受けると、ダウンの中の空気が動いてしまい、断熱材ではなくなるからです。

つまりダウンジャケットは、気温の低い季節のなかでも、晴れや風の弱い日に着ると暖かいですが、雪や雨そして強風の日は、ダウンジャケットだけでは足りません。その上に防風や透湿防水素材の服が必要になるのです。

湿気をコントロールする生地選び!

ところがです。ここが今、アウトドアウエアの開発などでも、メーカーにより重点の置き所や考え方が異なるところなのですが、完璧な防風の素材の中にダウンを閉じ込めてしまうと、外気温との温度差や、身体から発する汗や水蒸気で、結露しやすくなってしまいます。ダウンは水に弱かったですね。ダウンのために防風性能を上げたいのですが、逆に水分コントロールに失敗すると、ダウンの羽根をしぼめてしまう危惧があるのです。

では、透湿防水素材(風は防ぎ、水蒸気は外に放出できる)であれば大丈夫でしょうか?雪や雨の日であれば、ダウンジャケットの上に重ねる上着として透湿防水素材を着てもよいでしょう。または、ダウンをダイレクトに包み込む生地に透湿防水素材を使ったものを買うこともお勧めです。

でも、晴れた日で運動量が多いと、身体から発生する汗や水蒸気が多く、透湿防水素材でも水蒸気を放出しきれないことも危惧されています。もちろんこれはアウトドアの生死が分かれる状況での議論で、タウンユースではほとんど気にしなくていいレベルなんですけどね。

ともあれ、それくらい、ダウンに水がつくということは、それが内側(汗や水蒸気や結露)からでも、外側(雨や雪)からでもダウンの性能を下げるとして心配されているのだ、ということを大雑把に理解しておいてください。

だからこそ、ダウンの内側に着る服が保水するコットンである場合は、ダウンの性能をも下げてしまうのです。体温を使って水分を乾かそうとすると、液体が気体に変わる時、気化熱によって熱を奪います。加えて、服に水がついたままなので、ダウンはふくらみません。コットンシャツの上にダウンというのは、どちらの性能も引き下げる、とても残念な組み合わせになってしまいます。ダウンのインナーに何を着ればいいかは、こちらの過去記事をご覧ください。

■『風の強い日にフリースをアウターに着るのは間違い?!水と空気と風をコントロール。アウトドア流着こなし術を身に着けよう!』(2016年10月5日付記事)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2071

■『登山では、コットンのインナーは着ません! 正しくインナーを着こなして、寒い冬を暖かく。アウトドア流着こなし術を身に着けよう!その2』 (2016年10月19日付記事)
http://www.risktaisaku.com/articles/-/2094

ダウンを暖かくできる、身近な「アレ」とは?

さて、実はここまでは過去の記事でも紹介していますが、今回は冒頭でお伝えした「アレ」について知っていただきたいと思います♪

災害対策として、カイロを持っている人は多いですね。受験生も必須かもしれません。手軽に温かくできるので冬のお役立ちグッズです。そして、できるだけ暖をとりたいから、カイロをインナーの上に貼る方も多いことでしょう。でも、これは、気をつけてくださいね。

カイロが温かすぎて、汗をかいてしまうと、体は気化熱で体温を下げようとしてしまいます。温かくなりたいのに、体は冷やそうとしてしまっては、エネルギーの無駄使いになります。カイロを使った場合、汗をかいてしまうと、効率が悪いことをまずご理解ください。

そしてダウンなのですが、水分があると羽根をしぼめてしまいますから、カイロをつかって汗をかくということはダウンの性能まで下げてしまうことになるのです。だから、他の服を着ているより汗冷えが起こりやすくなってしまいます。ダウンの服でカイロを使うときは、特に汗をかかないように工夫することが必要です。

でも、このカイロ、ダウンにとって、非常にありがたい存在でもあるのです。災害時や野外など熱源は自分の体温のみと書きましたが、カイロはその他の熱源になるので、羽根をふくらませる材料として役立つのです。ですから、ダウンジャケットを着るときには、カイロをインナーのすぐ上に貼って汗をかいてしまうよりも、ダウンジャケットの服のポケットの中に入れてみてください。そうすると、熱源を得たダウンがぽかぽかあたたかい空気を蓄えてくれます。

これは、快適だというだけでなく、体温が元から低い人にも有効です。体温が低めの人は、ダウンを膨らませることができないので、着ても暖かい服にならないのです。でも、カイロをポケットにいれることによりダウンを膨らませることができれば、ダウンはちゃんと暖かい服になります。インナーにカイロを貼ってしまうと汗をかくだけでなく、例えば受験会場で暑く感じた時に、カイロ付きのインナーでは脱ぎ着しにくくなってしまいます。でも、ダウンのポケットにカイロだと、会場外に出た際に暖かい服となるので、調整しやすくなります。

このダウンを温めるためにカイロを使うテクは、テント泊の際、ダウンの寝袋を膨らませるのにも使ったりします。寝袋の場合、例えば体は暖かいけど、足先が冷えている人は、足元のダウンがふくらんでくれないので、足元は寒いままなのです。汗をかかない程度に、ダウンの寝袋自体にカイロを貼っておいて、ダウンを膨らませるテクを使えばとても暖かいのです。

そんな訳で、温かくなるコツとして、どんな製品を着るかということより、どうやって空気をためるのか、傘もささずダウンを濡らした状態ではダメ、ということを知っていると、応用の幅がでてきますよね!ダウンを着ている人は、空気をためることと、水にも気をつけてくださいね。そして、ぽかぽかになるポケットにカイロ技で冬を乗り切ってくださいませ♪

発熱するカイロを身体ではなく、ダウンジャケットのポケットに入れることで快適性が高まる(出典:写真AC)

(了)

 

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