美人の宝庫「ジョージア」を堪能できる風刺喜劇『葡萄畑に帰ろう』

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映画『葡萄畑に帰ろう』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『葡萄畑に帰ろう』

配給/クレストインターナショナル、ムヴィオラ 12月15日より岩波ホールにて公開
監督/エルダル・シェンゲラヤ
出演/ニカ・ダヴァゼ、ケティ・アサティアニほか

黒海とカスピ海に挟まれた中央アジアの国ジョージアは、日本語での国名がグルジアだったが、2015年4月22日より現在の国名となっている。国土面積は北海道の80%というから狭いと言えば狭い。ワインの産地としても有名。その珍しいジョージア映画の登場である。

いわば“社会派映画”だが、かといって決して堅苦しくはなく、ヒューマン・ファンタジー的要素を持った娯楽作の側面もある。

故郷に残した母をすっかり忘れたまま、政府の要職にあり、大臣の椅子の座り心地も悪くないギオルギ(ニカ・ダヴァゼ)。妻を早くに亡くし、娘アナ(ナタリア・ジュケリ)との折り合いは悪いが、元バイオリニストの熟女美人ドナラ(ケティ・アサティアニ)と恋仲になり、順風満帆。だが、嘘と騙し合いの政界での権力闘争の果て、大臣をクビになってしまった。さあ、どうする?

 

単なる社会派ではなく寓話的側面も

わが国はもちろん、ジョージアのような一見素朴な小国でも、政界は魑魅魍魎、忖度あり、陰謀あり。何しろ、主人公が大臣を務める省は何と“国内非難民追い出し省”というオソロシイ名称だ。シェンゲラヤ監督は、ジョージアの代表的監督だが、06年までジョージア国会副議長の要職を務めた、いわば有能な“タレント議員”でもあったので、政界の描写は辛辣にして、ユーモアたっぷり。大臣の椅子が天まで伸びたり、のシュールなタッチで描いたりする。そんな、一種の寓話的側面もあったりするのが特徴だ。

それにしても、中央アジアは美人の宝庫、と呼ばれるが、この映画でも“ジョージア美人”がいっぱい。オートバイを乗り回すハネっかえりの娘のナタリア・ジュケリはタッパがあり、濃い目鼻立ちのスレンダー美女。これが監督の実の孫娘というから興味深い。熟女美人のケティ・アサティアニは舞台女優だ。それと目を引いたのは、主人公が務める“追い出し省”の職員の女性たちが、皆スラリとした美女で、彼女たちがなぜかローラースケートを履いて、各部屋を行き来するサマは熱帯魚のようで目移りしちゃうね。彼女たち目当てで、この省庁でバイトしてみたいと思ったりして(笑)。

ボクの勘だが、監督の好きな女性のタイプは絶対この手だろう、と邪推するね。もうすぐ86歳の老巨匠シェンゲラヤ監督の感覚は驚くほど若い! 邦題のような“葡萄畑に帰る”のはラスト近くになってから。ことさら“牧歌性”“純粋性”を強調するような作品ではないことが、ボクにはかえって魅力的なのであった。