動物実験「可能な限り減らす」 新薬開発に不可欠 「培養細胞」使った代替法など崇城大で開発進む

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実験動物として一般的なマウス。医薬品開発をはじめ、さまざまな基礎研究を支えている(崇城大提供)
細胞を3次元培養するため、ピンク色の培養液を注いだプレート。3次元培養した細胞は、より生体に近い反応を示す=熊本市西区の崇城大

 医薬品開発などで新薬の効果や毒性確認に欠かせない動物実験。動物福祉などの視点から動物実験に代わる新たな手法を模索する日本動物実験代替法学会が先月末、熊本市西区の崇城大で開かれた。大会長を務めた松下琢[たく]副学長(60)は「生体の動物実験でしか分からない体の反応は依然として存在するが、可能な限り代替法に置き換える努力が必要だ」と指摘する。

 人工臓器など医療用生体材料の開発を進める松下副学長と古水雄志准教授(40)によると、マウスに代表される実験動物は、薬剤などの化学物質がヒトに及ぼす影響を確かめる上で不可欠な存在。古くから利用されてきたが、(1)動物を使わない代替法に置換(2)使う動物数の削減(3)動物の苦痛軽減-の国際原則を推進する動きが国内で進んでいる。

 日本実験動物協会によると、2016年度に取引された動物の数は、マウス320万匹、ラット89万匹、イヌ4700匹、サル類3200匹など。実験動物として最も一般的なマウスでみると、ピークは1988年度の938万匹超。現在の3倍近いが、代替法などの導入が進んで減少傾向が続いている。

 実験動物削減の転機となったのが、13年に欧州連合(EU)で発効した化粧品開発への動物実験禁止だ。以前はヒトの肌への刺激性を確かめるために、ウサギの目に試験対象のクリームを塗って、充血度合いを見る試験が当たり前のように行われていた。「人間の美のために動物に苦痛を与えて良いのか」との観点から化粧品業界が禁止したのを皮切りに、医薬品や農薬などさまざまな分野でも動物実験を見直す動きが広がる。

 動物の代わりに培養した細胞で薬剤の反応などを見る代替法は、動物の飼育施設縮小や試験時間短縮につながるなど、企業にとってコスト削減のメリットもある。一方で新たな試験法の確立や安全性についてのガイドライン作りが必要となる。

 注目されるのが、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って人為的に疾患を再現する手法だ。例えばiPS細胞からがんなどを再現できれば、新薬の絞り込みに大いに役立つ。

 その際に重要となるのが、松下副学長らが進める細胞の3次元培養だ。通常、試験管で細胞を増殖させると、ガラス壁に細胞が張りつくように平面(2次元)的に増えていく。一方、立体的に増える3次元培養の細胞は、より生体に近い反応を示すため、代替法に欠かせない技術となりつつある。

 ただ、動物実験の全廃は現実的に難しい。通常、体内に入った医薬品は肝臓で代謝、吸収されてから患部に届き体外へ排出される。こうした一連の生体内での薬の動きは、生きている動物でなければつかめないからだ。

 学会では、吸収から排出までの一連の機能を果たす肝臓、腎臓、腸など臓器細胞を順番に並べて、ヒトの体内の代謝に近いモデルを再現する試みなど最新の研究についても議論した。松下副学長は「生体外でどう薬効を調べるかは、世界が注目する分野。後継者育成と並行しながら開発を進めたい」と話している。(松本敦)

(2018年12月14日付 熊本日日新聞朝刊掲載)