東北大と産総研が作製に成功、磁気のない金属からナノ薄膜磁石

 東北大学と産業技術総合研究所は、磁気のない金属からナノ薄膜磁石を作ることに成功したと発表した。通常磁気を示さない金属を特殊な金属と絶縁体で挟み込んだ新しい界面構造で、同磁石を組み込んだ素子の基本特性を室温で観測することにも成功した。超高集積不揮発性磁気メモリの実現のための材料開発に新しい視点を与える成果としている。

 研究グループでは、数原子層の純マンガンを規則合金(常磁性体)下地の上に真空スパッタリング法で堆積し、酸化マグネシウムで挟み込んだ素子構造を作製。この界面に挟み込まれたマンガン層は微弱な磁気を発するナノ薄膜磁石へと変化し、その磁気の強さは強磁性体である鉄の約70分の1になることが分かった。また、磁気を保持する力(垂直磁気異方性)は磁場に換算すると19テスラを超えるほどに大きく、その磁気を保持する力が素子に電圧を加えることで制御できることも確認した。

 ナノ薄膜磁石を用いた素子の磁極の向きをビット情報とする不揮発性磁気メモリは、システム・オン・チップなどへの応用が進んでおり、人工知能技術への坦懐も見据えて世界的に研究開発が進められている。

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