【平成の長崎】台風13号 長崎県を直撃 平成18(2006)年

 佐世保市付近に上陸した台風13号の通過から一夜明けた9月18日、長崎県内各地で台風の猛威を示す被害が次々に明らかになった。住民らは復旧作業に追われ、交通機関にも台風の影響が残った。

台風13号によって約120㍍にわたり崩壊した市道=2006年9月18日、長崎市田中町

 長崎市の三菱重工長崎造船所では、船内の装備品をつり上げる高さ62㍍のクレーンが強風にあおられ、タービン製造工場に倒れた。建造中の船舶に大きな被害はなかったが、工場内は立ち入り禁止で復旧のめどは立っておらず「生産工程にも影響が出るだろう」(同社総務部)。
 五島市長手町では堤防が約40㍍にわたり決壊。堤防の横の道路もバラバラに崩れ、高潮の威力を見せつけた。長崎市田中町でも海沿いの市道が長さ約120㍍、幅約5㍍にわたり崩壊した。
 各市や県警などによると、南島原市で男性1人が亡くなるなど死傷者はこれまでに21人。県災害警戒本部によると、18日午前6時半までに判明した台風の被害は住宅22棟が全半壊、がけ崩れは23カ所、床上・床下浸水は15世帯、道路損壊は1カ所だった。
 各地では早朝から壊れた家屋を修理したり、清掃する住民の姿が見られた。木造2階建ての農具倉庫が全壊した五島市三尾野町の現場では、住民ががれきの撤去作業を続けた。橋本トメ子さん(71)は「吹き返しでやられたようだ。こんなひどい台風はめったにない」と絶句。
 新上五島町の有川湾で定置網漁を操業する有川漁船団では、2カ所で網が切れたり破れる被害が出た。石田吉男団長(69)は「網は1週間ほど前に入れたばかり。新しい網を準備するのに時間もかかり、経営に影響も出そうだ」と話した。

造船所のクレーンも倒壊し、工場の屋根を突き破った=2006年9月18日、長崎市飽の浦町、三菱重工長崎造船所

 県内各地で広範囲な停電も続いた。長崎市浜平1丁目の樋渡英利さん(76)宅では17日午後7時ごろに電気が消え、18日夕もろうそくと懐中電灯での生活を余儀なくされた。妻の幸恵さん(75)は「電気が来ないため、冷蔵庫、炊飯器、風呂が使えない状態。電話も通じず、携帯電話で親せきと連絡を取っているが、もうすぐ充電も切れそう。不安でしようがない。早く復旧してほしい」と話した。
 交通機関にも台風の影響が残った。JRは始発から運行を見合わせたが、午前11時すぎに全線で運行を再開。MR松浦鉄道も昼前に全線開通したが、島原鉄道は停電で鉄道信号機が作動せず、終日運休した。長崎バスは長崎―神戸の高速バス2便を運休した。

強風でなぎ倒された街路樹=2006年9月18日、長崎市の水辺の森公園

 空の便では、日本航空と全日空の長崎空港発の四便が欠航。海の便では九州商船の本土と離島を結ぶジェットフォイルやフェリーが午前中の便を中心に欠航した。長崎汽船も始発から伊王島―高島間の運航を見合わせたが、午前10時すぎに再開した。(平成18年9月19日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

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