【あおり判決】遺族「考慮してくれた」「危険運転根絶を」

 東名高速道路で起きた事故では、懲役18年の判決を受けた被告(26)のあおり運転を受け、ワゴン車に乗っていた静岡市の一家4人が死傷した。亡くなった男性=当時(45)=と妻=当時(39)=を突然失った遺族は2人を思いつつ公判と向き合い続けた。

 

 長女(17)は証人として出廷。あおり運転による被害撲滅を願い、「重い刑罰」を求めていた。判決を受け「私たちの気持ちを考慮してくれた判決で良かったです。ありがとうございます」とするコメントを出した。

 

 男性の母(78)は被害者参加制度で公判を見守った。判決後、「量刑について全面的に納得できるものではありません」としながらも「危険運転と認められることは良かった」とコメント。「自分の気持ちに一つの区切りをつけたい。あおり運転などの危険な運転が無くなってくれることを切に願う」との思いを寄せた。

 

 同じく法廷に通った妻の父親(73)も判決後に弁護士を通じてコメントした。危険運転致死傷罪の認定に感謝し、量刑については「いろいろ考え方もあると思うが、皆さまの尽力によるものだと考え、そのまま受け止めたい」と複雑な心情を明かした。

 

 あおり運転をはじめ、飲酒、無免許、大幅な速度超過など無謀なドライバーによる輪禍は後を絶たない。2000年に無免許、飲酒、時速100キロの暴走車に長男=当時(19)=を奪われ、危険運転致死傷罪の新設に尽力したNPO法人代表理事の鈴木共子さん(69)=座間市=は「量刑に不満は残るが、同罪適用の幅が広がり胸をなで下ろしている」と語る。

 

 あおり運転への厳罰化は必要だとの思いは強い。一方で「根本的には運転する人の倫理が問われる問題」との考えがあり、犠牲者をかたどったオブジェの展示活動を続けることで「意識の向上を訴えていきたい」と話した。

 

 「あおり運転を真正面から取り締まる法の新設が急務」と指摘するのは、京都府の中江美則さん(55)。12年4月に無免許運転の車が児童の列に突っ込んだ事故で、引率していた妊娠7カ月の長女=当時(26)=を失っており、「今回は『殺人運転』だ」と語気を強めた。「クルマ社会を問い直す会」の会員で被害者支援などに取り組む佐藤清志さん(54)は「画期的な判決だが、被告が納得していなければ決して更生には向かわない」と語った。

横浜地裁

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