WEC:BMW代表、ハイパーカー開発を否定。「GTEがトップカテゴリーになることを期待していた」

 BMWモータースポーツのイェンス・マルカルト代表は、WEC世界耐久選手権が2020/2021年から導入する“ハイパーカー規定”にBMWが進出する予定はないと述べた。

 12月7日、ドイツ・ミュンヘンで開催された恒例のシーズンエンドイベント『BMWモータースポーツ・シーズンレビュー』に登場したマルカルト氏は「WECの新規定に適したロードカーがないことに加えて開発期間が短いため、BMWがハイパーカーにエントリーすることはないだろう」と語っている。

 BMWは2020/21年からWECの最高峰カテゴリーとなる、ハイパーカー規定の草案を議論するテクニカルワーキンググループの一員として会議に出席していた。しかし、マルカルト氏は同社が1999年以降遠ざかっている、プロトタイプカーレースへの復帰を目指していないことを認めた。

「現時点で我々のロードカーラインアップの中には本来の意味でのハイパーカーがないため、2年以内にそれを準備、実現させることはできない」と記者団に語ったマルカルト氏。

「このレギュレーションはたしかに、5年間に掛かるコスト面で魅力を感じることができる。しかし、一からクルマを開発するとなれば、多額の資金を費やさなければならない。その概算はACOフランス西部自動車クラブが試算する2~2.5倍以上になるだろう」

「そのようなカテゴリーに進出することは、現時点で私たちの“ミッション”にはないんだ」

 また、マルカルト氏はハイパーカーと、現在BMWが参戦しているGTEカテゴリーが緊密に連携することで、より大きなアピールにつながると提案した。その一方で、市販車ルックの車体に量産ハイブリッドパワートレインを搭載するハイパーカーのルールが、GTEにどのような影響を与えるかについて懸念を示している。

 BMWは2019年シーズンも、今年デビューさせた『BMW M8 GTE』でのプログラム継続を発表。引き続きWECのLM-GTEクラスとIMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップのGTル・マン(GTLM)クラスに集中するという。

 そのGTEカテゴリーでBMWのライバルとなる複数のメーカーが、同クラスをプレミアムカテゴリーに昇格させ、より高性能なGTEマシンを導入するコンセプトをWECに提案したとされている。しかし、この提案はシリーズに受け入れられることはなかった。

2011年以来、7年ぶりにル・マンに復帰を果たしたBMW

「我々はGTEクラスが一層注目を集めるために、シリーズのトップカテゴリーに昇格することを望んでいた」とマルカルト氏。

「なぜならGTEは(世界の名だたる)トップメーカーがもっとも熾烈なレースを繰り広げている場所だからだ」

「私たちは(今後登場する)ハイパーカーの性能と、それがGTEクラスにどんな影響を及ぼすかを考慮する必要があり、それを注視しなければならない」

 最後にマルカルト氏は「現在、我々はすべてにおいて良好な立場にある」とコメント。

「そのためハイパーカーを用意していない事実を心配しているわけではないんだ」と続けている。

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