あおり死亡事故に判決

 お互いに信頼し、うなずき合う。今年の新語・流行語の年間大賞に、そんな同意の掛け声の「そだねー」が選ばれてどこかほっとした-と先日ここに書いた。これが「あおり運転」といった言葉でなくて良かった、と▲運転中、人の車の後ろにぴたりと付いて、脅かす。荒々しくて威圧的なこの行いは、流行語にしては胸に重い。その一方で、繰り返し人々の口に上り、語られ、問われるべき行為でもある▲昨年6月、神奈川県の東名高速道路で、親子4人の乗る車が追われ、両親が死亡した追突事故は、思い起こすとやるせない。追い詰めた男(26)に横浜地裁は危険運転致死傷罪を適用し、懲役18年の判決を言い渡した▲親子のワゴン車を男が追い掛け、進路をふさぎ、無理やり停止させた。そこに後ろからトラックが突っ込んだ。事故の前、男はパーキングエリアで駐車方法を注意されて逆上し、「文句を言う」ために追い掛けたという▲逆恨みの極みだろう。逆上、逆恨み。「逆」の付く激烈な感情に任せた暴虐な行いに、ここで歯止めを。世にそう示した判決だろう▲公判では、両親を亡くした娘が証言に立ち、「世の中のあおり運転を少しでも減らすために」厳罰を求めたという。繰り返し人々の口に上っては、世に問われるべき行いなのだとあらためて知る。(徹)

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