グラウンド共用、休日は清掃活動など行う富岡西…21世紀枠候補校、推薦理由は?

高野連が来春選抜の21世紀枠候補9校を発表

21世紀枠の制度ができた2001年には徳島県推薦校で四国地区候補の第1号となった

 日本高野連は14日に来春の第91回選抜高等学校野球大会の21世紀枠の候補校9校を発表した。21世紀枠は練習環境、地域貢献などが選考条件となり、各9地区から推薦される。そこで、ここでは推薦された9校の推薦理由などを紹介。今回は四国地区の富岡西高校だ。(主催者発表文より一部抜粋)

 1896年に徳島県尋常中学校第二分校として開校し、今年で創立122周年を迎えた徳島県南部を代表する高校。校訓は「質実剛健」、校風は「文武両道」で、勉学だけでなく部活動にも精力的に取り組んでいる。

 野球部は1900年創部で今年119年目。県内で2番目に古い野球部で、保護者や兄弟が野球部OBという部員も多い。2005年から徳島・脇町・富岡の旧制3中学校OBにより、「野球」の名付け親で旧制脇町中学校の中馬庚校長を記念した「中馬野球大会」が明治時代のクラシックなベースボールスタイルで行われている。

 これまで春季徳島大会優勝3回、準優勝2回で春季四国大会出場2回、夏の選手権徳島大会ベスト7回、秋季四国大会には今秋を含め5回出場している。また21世紀枠の制度ができた2001年には徳島県推薦校で四国地区候補の第1号となった。前年に四国大会初勝利を挙げた2008年を含め、これまで2度四国地区候補校になったが、甲子園出場は叶っていない。なお、秋季四国大会に初出場した1983年当時の監督は、野球部OBで当時22歳、教員生活1年目だった現在の小川浩監督である。

阿南市は全国で唯一、野球を通じた地域活性化を目指す「野球のまち推進課」

 グラウンドは他部と共用で、放課後の外野ではサッカー、ホッケー、ソフトボールの各部が練習するなど、環境は十分ではない。普段は内野しか使えないため、バントゲームやゴロ打ちなどの実戦的練習を中心に行い、バッティングは早朝練習で行う。平日の練習は16時45分からで、JR・バス通学生に配慮して全体練習は19時に終わる。週末に校内合宿を行って練習量を補うなどの工夫をしている。

 野球部員は生徒会活動にも熱心で、生徒会長をはじめ、生徒会の13専門委員会のうち、6つで野球部員が委員長を務めている。また2年生の7クラス中4クラスの委員長が野球部員。休日は校門付近の国道沿いのゴミ拾いなどグラウンド周辺の清掃を30分程度行ってから練習に入る。冬場は学校近くを流れる桑野川の堤防のゴミ拾いも行う。

 高校のある阿南市は野球熱が高く、市には「野球のまち推進課」という全国で唯一、野球を通じた地域活性化を目指す担当課が設置されていて、還暦野球や少年野球の大会が盛んに行われている。しかし阿南市より南は過疎化が激しく、1996年夏に「ミラクル新野」と言われて旋風を巻き起こした新野高校も来春には統合されて校名が消える。県南部の野球を支える富岡西は、阿南市民のみならず、徳島県南部住民にとって大切な存在で、甲子園出場が心待ちにされている。

 四国地区各県の候補校はいずれも地域の伝統校で困難な練習環境の中で努力してきた。その中で、何度もあと一歩で甲子園というところまでいき、しかも2001年と08年に四国地区推薦校になりながら甲子園が叶っていないこと、地域から預かった子供達を育てて指導者としてまた地域に帰している点、野球熱が高い市民が地域を挙げて応援していることを高く評価し、満場一致で富岡西が四国地区の推薦校に決まった。(松倉雄太 / Yuta Matsukura)

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