【特集】パラバド初代王座をつかみ取れ!

20年東京で新採用、日本にチャンス

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 2020年東京パラリンピックで初めて採用されるバドミントンは、日本にとってメダル有望競技だ。パラバドミントンは、車いすを使うものから、下肢(脚)、上肢(腕)、低身長それぞれの障害に応じ6クラスがあり、多彩なプレースタイルが楽しめる。現在、日本の強化指定選手約30人のうち、半分以上が世界ランクトップ10以内。日本人の「初代王者・女王」誕生という夢に向け、活気があふれる日本選手権(15、16日・福岡県久留米市)の様子をのぞいた。

えび反り

 「東京パラのメダルですか。大丈夫。取ります。取れます」。車いす2クラスのうちWH1女子シングルスと、WH2の選手と組む女子ダブルスで2冠を達成した里見紗李奈(パシフィック)の笑顔がはじけた。競技を始めてまだ1年半の20歳。車いすのチェアワークの熟達が求められ、比較的年齢の高い選手が活躍するクラスに出現したホープ。日本障がい者バドミントン連盟の幹部も「一番トップを取れそうな選手」と期待を寄せる。

 WH1とWH2の違いは、大まかに言うと体幹の力が効くかどうか。そこが効かず、より障害が重いのがWH1。両クラスともシングルスはコートの横半分だけを使用。前後の揺さぶりや駆け引きが見どころだ。

 里見の強みは体をえび反らせてレシーブする守備範囲の広さ。「私はチェアワークが遅いので、粘り強くシャトルに食らいつき、ショットを相手コートの奥深くに返すようにしている」と説明した。

 中学時代に部活でバドミントンを経験。高校3年の時に、自動車事故で脊髄損傷を負い、パラバドミントンに出会った。「最初は下手だったけど、目標にする選手のレベルを少しずつ上げて、ここまで来た」と言い「次の目標は世界ランク1位のタイ選手にシングルス、ダブルスとも勝つこと」と話した。

車いすWH1の女子シングルス決勝で体を反らせてシャトルを打つ里見紗李奈=12月15日、福岡県・久留米アリーナ

強気

 健常者顔負けの激しくダイナミックなプレーが魅力の上肢障害SU5の男子シングルスを制した今井大湧(20)は「(東京パラは)出るだけでなく、初めての優勝者になれるよう頑張りたい」と力強い。

 生まれつき右の前腕に障害がある。愛知の強豪校、愛工大名電高時代から健常者に交じってシャトルを追い、現在は、日体大に所属する。「SU5はルールも健常者のバドミントンと同じ。自分の中では差はないし、気をつかうところもない。みんなと一緒に同じ練習メニューをしている」という毎日だ。

 決勝では第1セットで5点差以上をつけられる場面もあったが、逆転。「日体大というトップレベルの環境で練習していることが、自信になっている。リードされていても強気でいける」と精神的な成長を実感した。

上肢障害SU5の男子シングルス決勝でプレーする今井大湧=12月15日、福岡県・久留米アリーナ

直球

 「体力、筋力、技術のトータルで、ようやくピークの時の半分まで戻った」。SU5女子シングルス優勝の元世界女王の鈴木亜弥子(七十七銀行)=31=は、落ち着いた口調だ。09年に世界選手権、翌年にアジア大会で金メダルを獲得した後、引退したが、14年に東京パラでのバドミントン実施が決まり現役に復帰した。

 生まれつき右腕が肩あたりまでしか上がらない。もともと健常者に交じってプレーし、埼玉・越谷南高時代には全日本ジュニア選手権のダブルスで準優勝している。引退したのは「友達とおしゃべりしたり旅行したり、ごく普通のことがしたかった」から。鈴木にとってパラバドミントンは〝簡単〟すぎたのかもしれない。

 東京パラの時には33歳。「百パーセントに戻すのは無理でも、80までいけば世界のトップと戦える」と自分の身体を冷静にみつめる。きついこともあるというが「20年東京パラのためと思えば頑張れます」と明るい声で言った。

上肢障害SU5の女子シングルスの鈴木亜弥子=12月15日、福岡県・久留米アリーナ

 パラリンピックでの初代女王への意気込みを聞くと、みんなの気持ちを代弁するような〝直球〟が返ってきた。「なりたいですね-。うん、なりたい。初代って1回だけのことですから。なりたいです」。(共同通信=松村圭)