数々のドラマを生む高校サッカー その魅力と問題点とは

毎年、夏にはインターハイ、冬には全国高校サッカー選手権大会が開催されている。多くの部員がインターハイや選手権で全国大会に出場すること、優勝することを夢見て日々練習に励んでいる。今回はそんな高校サッカーの魅力と問題点に 触れていく。

高校サッカーの魅力は「ストーリー性」や「応援の凄さ」

筆者が観戦時に撮影

12月30日に第97回全国高校サッカー選手権大会が開幕する。全国4000を超える高校サッカー部員の憧れの舞台の選手権。全国大会出場、そして優勝を目指し、多くの高校生達が日々、厳しい練習に励む。

選手権大会は1回戦から地上波で生放送され、毎年、チケット完売の試合が多く出る人気を誇る。東福岡高校が優勝した第94回大会の決勝は埼玉スタジアムで行われ、観衆は5万4000人を超えた。

Jリーグのユースや街のクラブチームが集う、クラブユースには、クラブユース選手権などの大会

があるが、同大会はテレビ中継はされることはほとんどない。

高校サッカーはテレビ中継され、メディアから注目される。高校サッカーにはあって、クラブユースのサッカーにはないものは何なのだろうか。そして、高校サッカーの魅力は何か。

高校サッカーの魅力はやはり、ストーリー性や応援にあるだろう。インターハイや選手権に出場するため、部員達は遊びや恋愛、時には勉強をも犠牲にし、3年間サッカーに励む。強豪校ともなれば、部員数が100人以上になることも珍しくない。そんな中で、季節を問わず厳しい練習がほぼ毎日行われる。そして、その3年間の集大成が冬の選手権だ。仲間と共に厳しい練習に耐え抜き、勝ち進んだものだけが全国大会の舞台に立つことができる。時にはチームメイトや監督とぶつかることもあるだろう。試合に出れない仲間の想いがこもったスタンドからの声援。そんなそれぞれの要素がストーリーとなり、魅力になるのだ。

Jリーグのクラブと違うのは、メンバーに入れなかった部員たちが中心となって応援する点だ。

3年間同じグラウンドでプレーした仲間をスタンドから応援するのは、普通に好きなクラブを

応援するのとは違った感覚になることだろう。Jリーグクラブのサポーターとは違った雰囲気、感覚で応援するのも高校サッカーの魅力だろう。

魅力が魅力であると同時に問題点に

魅力的な高校サッカーだが、当然のことながら問題点もある。それは、「インターハイや選手権に出場して勝利することが美学」という風潮があることだろう。そして、多くの部員達が日々切磋琢磨した熾烈なレギュラー争いを繰り広げる環境、スタンドから熱い声援を送る多くの部員達。それらの魅力は魅力であると同時に問題点にもなっている。

部員数が多く、レギュラー争いが熾烈なのは、競争心を生むといったメリットもある。スタンドからの熱い声援も魅力的であるのは間違えない。しかし、それは裏を返せば、それだけ試合に出れない部員達が多くいるということになる。

高校サッカーの主要3大会はインターハイ、選手権、そしてクラブチームと唯一対戦する高円宮杯だ。高円宮杯はリーグ戦を採用しているが、インターハイと選手権はトーナメント方式。リーグ戦の

高円宮杯はセカンドチームも別カテゴリのリーグであれば、参入はできるが、インターハイと選手権は現状、1チームしか出場できない。登録メンバーに入れなければ、試合に出場することはできないことになる。

インターハイと選手権に関しては、トーナメントのため、負けたらその時点で敗退。高円宮杯もリーグ戦ではあるものの、昇格、降格制度がある。そのため、勝つために必然的に能力の高い選手を起用することになる。高校サッカーは勝利至上主義になりやすい環境であるといえるだろう。

メディア、学校による影響も問題に

高校サッカーはメディアにも取り上げられる。それが選手達のモチベーションの1つになることもあるだろう。しかし、それが更なる勝利至上主義につながる危険性もある。高校は勝ち進んで行けばいくほどメディアに露出する機会も増える。

メディアに露出すれば、知名度も上がり、高校に入学する生徒を増やすきっかけになる。そのため、

多くの私立高校では特待性制度を導入し、スポーツが優秀な生徒を学費を一部負担したり、成績の基準を下げてまで入学させようとする。公立高校ですら、本来合格ラインに達していない生徒もスポーツに秀でていることが理由で合格させる場合もある。

これは高校サッカーに限らずだが、生徒達は学校の広告塔として使われてしまうこともあるのだ。

2種から1種にかけて選手数が激減。多くの選手が燃え尽き症候群に

高校サッカーの問題点は他にもある。それは、「燃え尽き症候群」で高校まででサッカーをやめてしまう選手が後を絶たないことだ。2008年度の2種登録選手数は153,047人で2017年度は176,292人。

一方、一種の登録選手数は2008年度は175,947人に対し、2017年度は148,250人。2種には高体連だけなく、クラブチームも含まれているが登録選手数は過去10年で増えている年が多い。

しかし、大学生、社会人のカテゴリとなる1種は過去10年間で毎年選手数は減り続けている。これは

多くの選手が高校3年間のきつい練習によって、燃え尽きてしまい「大学や社会人になってまでサッカーを続けようと思わない」ことが予想される。特に大学は「サークル」があるため、週1程度で

サッカーを楽しむことができる環境もあるため、わざわざ部活に入ってまでサッカーを続けようと

思わない学生が大半を占める。

高校でサッカー漬けの日々を送り、多くの者を犠牲にしたがために、大学生になってからその反動で

遊び惚ける学生も少なくない。

高校サッカーはストーリー性といった魅力がある半面、様々な問題点があるのも事実だ。今後、高校サッカーが変わる日は来るのだろうか。

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