名もない景気

 日本の国土をつくったと神話にある男神「イザナギノミコト」に由来することは、よく知られる。イザナギの時代以来の出来事、という意味で、1965年11月からの高度経済成長期の好景気を通称「いざなぎ景気」と言う▲4年9カ月もの間、景気は拡大を続け、カラーテレビ、クーラー、自動車の「3C」が普及した。かつてない急成長は「イザナギ以来」と呼ぶにふさわしかったろう▲その成長期を抜いたという。内閣府は先ごろ、2012年12月からの景気拡大は少なくとも昨年9月まで続いていて、戦後2番目の長さになったと判断した▲とはいっても、実感がどうも得られない。それもそのはず、年平均の成長率が10%を超えた高度成長期に比べ、今の成長率は1・2%にとどまっている▲そんな低成長ながらも、このままいけば来月には小泉政権下(02~08年)での6年1カ月を超え、戦後最長になるらしい。00年代の成長も「実感なき景気回復」と呼ばれた。今と似ている▲もう一つ、似たところがある。手応えに乏しいためか、これという呼び名がない。小泉政権時の成長は「いざなみ景気」ともいわれたが、今はまず聞くこともない。「イザナギ以来」の呼び名がふさわしかった時代は遠く、今また「名もない好景気」が戦後最長を目の前にする。(徹)

© 株式会社長崎新聞社