低迷に苦しむウイリアムズF1、2019年は技術部門の刷新でトップチームへの返り咲きを狙う

 ウイリアムズF1チームでテクニカルディレクターを務めるパディ・ロウによると、2018年がウイリアムズにとってかなり悲惨なシーズンだったという現実からは逃げられないが、チームはすでに問題点の洗い出しと対策を進めており、より良い2019年シーズンを送れるはずだと自信を見せている。

「2018年はウイリアムズにとって非常に困難なシーズンだった。良い点があるとすれば、すでにスタッフたちが問題点を把握し、解決に向けて懸命に取り組んでいるということだ」と、ロウはオーストラリアのテレビ局Speedweekに語った。

「私は2019年のF1でチームが確実に改善されるだろうなどと予言をするつもりはない。だが、良くなっているはずだ。我々はもう方向転換を終えたのだからね」

 空力部門の責任者だったディルク・デ・ビアとチーフデザイナーのエド・ウッドは、すでにチームを離れており、パフォーマンス・エンジニアリング部門責任者を務めていたロブ・スメドレーも今週チームを離脱した。

「ウイリアムズでは様々な変化が起きている最中だが、改善には時間がかかるだろう。最初に技術部門の変化が必要だ。より良いマシンを作るためにはそれが唯一の道なのだから」

「(2018年のパフォーマンス低迷については)マシン設計や開発における、いくつもの原因を見つけられた。それこそが重要な点だ」

「万能なひとつの対策など存在しない。我々は、そのすべての課題に取り組んでいるところだ」

 ロウはメルセデスF1で最高技術責任者を務めた後、2017年に古巣ウイリアムズへ移籍した。そんなロウの目には、ウイリアムズの問題は単に過去数シーズンだけにとどまらず、かなり長期間続いているように見えている。

「ウイリアムズが最後に勝利したのは2012年にまでさかのぼる。スペインGPでパストール・マルドナドが優勝を飾った。その前は2004年で、ずいぶん前の話だ。チームのパフォーマンス低迷はかなり長期にわたっている」

■ウイリアムズの組織改革を進めるパディ・ロウ

 ロウによれば、スタッフの入れ替えは2019年にかけて続くという。

「必要なのは組織改革だが、その成果はすぐには表れないだろう。ウイリアムズは、これまであまりに凝り固まっていた」

「我々はF1で3番目に古いチームだ。スタッフの一部は長年チームとともに働いているが、そのことは我々にとって欠点にもなり得る」

「時には新鮮な血を入れる必要もある。新たな取り組み方を導入できるだけの、正しい知識を持った熟練スタッフがチームにいなければならない。我々は今、その行程を進めている最中なのだ」

「様々なことを根底からひっくり返している。私の考えでは、完璧な組織など存在しない。だが幸運なことに、チームには正しい基盤が存在している」

 近年のチーム活動を制約する要因のひとつが、資金不足だ。2年前から費用を投じてきたカナダ人実業家で億万長者のローレンス・ストロールは、2019年からレーシング・ポイントF1のオーナーとなるためウイリアムズを去った。またセルゲイ・シロトキンを支援していた大口スポンサーのSMPレーシングも手を引いている。

 さらにタイトルスポンサーであるマルティーニとの契約も2018年末で終了するが、不足分の一部は、2019年にウイリアムズのレースシートでF1復帰を果たすロバート・クビカを後援しているポーランドの石油企業PKNオーレン社から新たに多額の資金提供を受けることで補える予定だ。

 だが、ロウは近年のチーム低迷の要因を資金不足だけに帰するつもりはない。

「投資だけが問題なのではない。ワークフローや設計や、企業文化の問題でもある。ウイリアムズではそれらの要素も変わりつつあるが、時間はかかる」

 最後にロウは、将来的にウイリアムズが世界選手権でトップに返り咲けない理由などないとも付け加えた。

「チームには経験豊富で仕事に忠実な人々がいる。素晴らしいマシンファクトリーがある。土地も建物も自前で保有している。すべてのF1チームが我々と同じ状況にはない。それに、最高クラスの風洞もある。材料はそろっている。あとは我々がそれらをどう使うかだ」

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