エリック・クラプトン『ハッピー・クリスマス』 それぞれの悲しみに贈るクリスマスソング、それはブルース

エリック・クラプトン『ハッピー・クリスマス』

 クラプトンの24作目のスタジオアルバムは、なんとサンタに扮した本人のイラストがジャケットでほほえむクリスマスアルバム。根っからのブルース・マンの彼が何で今更クリスマス?とも思いますが、アルバム『クラプトン』(2010年)以降、ブルース、フォーク、カントリー、ジャズ等の古典に深い理解と憧憬を示してきた彼がポピュラー音楽の一つのルーツとしてのクリスマスソングを取り上げることは理解できます。ここに聴かれるクリスマスソングはホリデイ・シーズン用のコマーシャルな作品とは異なりクリスマスというテーマの中にもブルースが存在すると言う視点から制作されたように思います。

 フレディ・キングの「クリスマス・ティアーズ」などブルース、R&B畑からの選曲も興味深いですが、故郷を離れた人、愛する人を失った人、離れ離れの家族、といった悲しい内容の曲が目立ちます。それぞれの人が持つ悲しみに贈るクリスマスソングは、そのままブルースとも言えるでしょう。

(ユニバーサル・2600円+税)=北澤孝

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