NPO法人「女子硬式野球サムライ」が目指す競技の普及 女性向け野球教室を開催

女性を対象にした野球教室「SAMURAI BASEBALL FESTA」の様子【写真提供:竹村裕児】

ヴィーナスリーグ所属の「侍」、NPO法人が埼玉で運営

 女子野球といえば、4球団が所属する「日本女子プロ野球機構」がプロ野球として確立される。アマチュアでは、関東女子硬式野球連盟が主催、読売ジャイアンツが後援する「ヴィーナスリーグ」が1部から4部、さらにはU15リーグを擁し、関東中心に熱戦を繰り広げている。ここでは、高校や大学、企業チーム、中学生以上のクラブも、全て同じ土俵で戦っている。

「NPO法人 女子硬式野球サムライ」からは「侍」と「侍Bee」の2チームがヴィーナスリーグに参加。今季2部を戦った「侍」は残留、4部を戦った「侍Bee」は3部昇格を決めている。

 11月で今季は閉幕したが「侍」の活動は終わらない。12月16日、最近では恒例になりつつある女性を対象にした野球教室「SAMURAI BASEBALL FESTA(通称サムフェス)」が、埼玉県立富士見高校のグラウンドで開催された。

 特定非営利活動法人(NPO)が運営する「侍」は、女子硬式野球の発展に貢献したいという思いから発足し、主に「女子野球の競技人口を増やす」「指導者を育成し、競技レベルを引き上げる」という理念の下に活動している。その一環として開催しているのが、サムフェスだ。

 サムフェスでは、参加対象を「野球が大好きな女性(年齢・経験問わない)」とし、初めて野球を体験したい人、レベルアップを望む人が、侍のメンバーとともに練習し、指導を受けられるという内容だ。今年も約30人の女性がユニホーム姿でグラウンドに登場。スポーツ少年団に所属する小学校6年生や中学生、定時制高校の野球部でプレーする高校生(定時制高校の全国大会は神宮球場で行われ、女性も公式戦に参加できる)、男子に混じって高校野球生活を過ごした高校3年生、普段は男子野球のマネージャーをしている高校生、さらには成人に近い子供を持つという女性など、幅広い層の女子選手が参加した。会場は埼玉県だったが、福島、山形、新潟など遠方からの参加者も見られた。

女子だけでプレーするのは初めてという参加者も多数

 開会式を終えると、早速ウォーミングアップ。普段「侍」で行うウォーミングアップに加え、初対面の参加メンバーたちにとって交流の糸口になるように鬼ごっこを取り入れると、参加者から笑顔が溢れた。キャッチボールも守備練習も、侍の選手がほぼマンツーマンで指導しながら、基礎から応用まで多くの技術を丁寧に伝えていった。

 観覧に訪れていた保護者や指導者向けには、「侍」のトレーナーであり、女子野球医科学研究会代表の理学療法士、梅林遼太氏による実演講座を開催。指導者のレベルアップにも貢献した。

 打撃練習後の午後の部では、「侍」メンバーお手製の得点ボードが出現し、本物さながらの「リアル野球盤」が行われた。全日本女子硬式野球選手権3位、全日本女子硬式クラブ野球選手権3位、と全国でも名を轟かせる「侍」投手と直接対決に、会場は大いに盛り上がった。

 イベントを通じて、参加者同士の会話は弾み、笑顔が絶えることはなかった。普段は、男子ばかりで女子のいない環境で野球をしているため、女子だけプレーするのは初めてという参加者も多い。使用する道具や今後に進路についてなど、普段はなかなか他人と共有できない話に花が咲いたようだ。

 サムフェスの閉会式では、日本代表チームでキャプテン経験もある六角彩子選手が挨拶。寒さの中でも全国から集まった女子野球選手に対して「女子クラブチーム侍は、女性なら誰でも、何歳からでも参加できます。一緒に野球をしましょう!」と元気いっぱいに呼びかけた。

 男子若年層における野球競技人口減少は顕著だが、女子に関しては、近年は着々と競技者が増えている。しかし、スポーツ用品店に行けば9割以上が男性用で、女子野球ワールドカップ6連覇の報道も決して大々的だったとは言えず。「女子にとって野球を始める入り口はまだまだ狭い」と「侍」の選手は語る。

「まだまだ女子野球はマイナーと言われる競技。同じような境遇の人が集まって、野球を楽しんでもらいたい。そして、今後も野球を続けてほしいです」

 野球が大好きな女子による、野球が大好きな女子のための野球教室は、今年も盛況で幕を閉じた。(大森雄貴 / Yuki Omori)

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