人に感動を与える側になりたい
——はたなかさんは、大学在学中から業界に入られていますよね。
はたなか:はい。そのぶん留年したり、大学生の時期がほかの人より長いんですけど(笑)。大学2年生の冬に『映画けいおん!』を見に行ったんです。その映画がすごく良くできていて、笑って感動して泣いて…。それがきっかけで、エンターテイメントで人を楽しませる側になりたいと思ったんです。そこで東京に出ようと決意して、大学を休学して東京に出てきたんです。
——両親には反対されませんでしたか。
はたなか:めっちゃされました。「卒業してからでいいでしょ」って。でも、「今じゃないと!」って勢いで説得したんです。
——そこで、「京都アニメーションに」とはならなかったんですか。「けいおん!」きっかけならなおさら。
はたなか:みんなに言われます(笑)。アニメ好きだったんですけど、制作側の知識が全くなくて、京都アニメーションさんが京都にあることに気づいてなかったんです(笑)。それに当時は、エンターテイメントの世界に飛び込もうという意識の方が強かったので、とりあえず東京に行こうと思っていました。みんなが漠然と東京に憧れるように、東京に出たらなにかあるんじゃないかと思っていたんです(笑)。
——私も上京した口なのでわかります(笑)。
はたなか:知り合いに劇団をやっている方がいて、最初はそこでお世話になっていろいろと教えてもらいました。その後、劇団の先輩のお父さんがラジオの制作をされている方で、興味があるのなら紹介しようか? ということでまずはラジオの制作をやり始めたんです。そこで、1年半ほどラジオの仕事をさせていただきました。
——アニメ以外のエンタメを経験されていたんですね。
はたなか:そうですね。ただ、根底には、「いつかアニメ関連の仕事をしたいな」と思っていました。そう思いながらラジオをやっているうちに人の輪が広がっていって、「アニメの仕事やりたいなら、ある人を紹介するよ」とお話をいただいて、ご紹介いただいたのが、Creators in Pack(以下、CP)の会長のひらさわだったんです。
——そこで今の会社に至ると。ひらさわさんと最初に会ったときはなにをお話しされたんですか。
はたなか:最初に、「アニメのどんな仕事をしたいの?」と聞かれました。そこで、「プロデューサーをやりたいです!」と答えたんです。その返しにひらさわから、「プロデューサーって言ってもいろんなタイプがあるけど、具体的にはどんなことをしたいの?」って聞かれて。
——確かにプロデューサーと言っても、現場や宣伝や資金集めといろんな形がありますね。
はたなか:そうなんです。でも当時は、勢いだけで来てしまったのでよく知らずに、「そんなにいろいろあるんですか!?」って面食らってしまって。ひらさわも笑ってました(笑)。
——プロデューサーの仕事は外からだとわかりづらいですから、しょうがないですよ。
はたなか:とにかくアニメの現場に入りたかったので、「なんでもやります、アニメのお仕事をやりたいんです」と伝えたところ、「じゃあ、やってみよう!」と言っていただけて、翌週から働き始めました。ただ、本当になにも知らなかったので、最初は関連会社の下請け専門の会社に入って現場を教えてもらいました。
——そこで基礎を学んで、と。
はたなか:その会社は下請け会社なので、たくさんの会社と取引があるのですが、もともと人とコラボしてなにかをするのが好きなので、取引先の人と仕事ができるのは楽しかったです。
携わった作品は全部好きになります
——今はどういった作品を手掛けられているのですか。
はたなか:今期はTVアニメ『人外さんの嫁』などを後ろからバックアップする形で携わっています。制作や宣伝のアシスタントプロデューサーのお仕事が多いですね。
——はたなかさんだとそちらも向いていますね。
はたなか:制作をやめたわけではないんですが、もともと希望していた宣伝の仕事も徐々にやらせていただいています。
——携わっている作品について伺ってもいいですか。
はたなか:『人外さんの嫁』は癒し系で、どなたでも楽しめる作品なんです! 面白い設定で、男子高校生が“嫁”として、だんだんと旦那を愛していき、成長して夫婦になっていく光景や、人間ではないからこそ起きる問題も出てきたり、不思議な癒し系作品になっています。
——若いプロデューサーから見て、現在のアニメ業界をどのように見られていますか。最近は私ぐらいの世代が子供のころに見ていたリバイバル作品も多く作られていますが。
はたなか:『魔法陣グルグル』など、自分が好きな作品がまたアニメになるのを一視聴者として楽しんでいます。僕は今27歳なので、この作品は少し上の世代の作品になるかと思いますが、あと数年したら、僕らの世代にドンピシャの作品もリバイバルされていくのかなと思います。
——そうかもしれないですね。
はたなか:ただ、リバイバルやリメイクは難しさもありますよね。その作品を知らない世代からすると、昔の作品なので見なくていいかと思われてしまうこともあるでしょうし…。アレンジの仕方によってはもともとのファンが離れていってしまうこともありえたり…。そういう意味だと今期(18年秋)『SSSS.GRIDMAN』は、すごいなと思っています。制作側としては羨ましくもあり、尊敬の念も抱いています。
——さらに今はWEB配信限定も増えていますね。
はたなか:スマートフォンやパソコンが普及した今、「いつでも読める・聞ける・見られる」というのは大きいですからね。1つの基準としてパッケージの売れ行きというのはありますが、いろいろな媒体で売り方を考えることも多くなっています、特に配信は重要な媒体と位置づけられているかと思います。
——やはりそうなんですね。
はたなか:配信は国によっても基準が変わりますから、気を付けないといけない面はありますが、より多くの方に見ていただける機会が増えるのはいいことだと思っています。
売る方にどちらかというと興味があるんです
——配信というと、はたなかさんはYouTuberとしても活躍されていますが。
はたなか:趣味でやっているだけで、活躍はしていません(笑)。
——なぜ、YouTuberを始められたんですか。
はたなか:友達から、「目立ちたいなら、やってみれば?」と言われて始めたんです。自分でなにかをして、人に楽しんでもらうのはやりたかったことでもあるので、すごく楽しく動画を作成しています
——こんな仕事をしていてなんですが、私は人前に出るのは苦手なので、すごいなと思っています。
はたなか:ありがとうございます。以前から人前に出る機会は増やしていきたいなと考えていました。
——それはどうしてですか。
はたなか:自分自身が目立ちたい! と、思っているのもありますが(笑)、自分自身に付加価値をつけられたらいいなと思っています。コンテンツを作ることももちろん面白いんですけど、頑張って作っているのに見てもらえないのは悲しいので、宣伝として作品を広める為に頑張りたいと思っています。なので、自分でまず出来ることとして、自分に付加価値や宣伝力があれば、少しでも作品の力になれるかなと思います。
——今はアニメの本数が多いですから、知られずに埋もれていく作品もありますからね。
はたなか:仲間が一生懸命作ったものがそうなるのは嫌なので、少しでも力になれればと思っています。ひらさわがよく、「時間=命、時間を使うということは、命をかけているのと一緒」と言っていて、そうやって命をかけた作品が1人でも多くの人に見てもらえれば嬉しいですね。なので、YouTuberとして成功して、自分自身に付加価値がつけば、自分を通して作品を見るきっかけにもしていただけるのではと考えています。自分が目立ちたいだけでは決してないんです!(笑)
——素晴らしい考えだと思います。
はたなか:そう言って支えてくださる方がいらっしゃるので、本当に助かっています。マチ★アソビなどのイベントでもチャンスをいただけて大変ありがたいです。より多くの人にコンテンツを楽しんでいただきたいし、LOFTさんは本当に最高の場所なので、これからももっとイベントをやっていきたいです!
——ぜひぜひ。はたなかファンもいますからどしどしやっていきましょう。はたなかさんの話は一度がっつり聞いてみたいと思っていたので、今回はいろいろと伺えて楽しかったです。
はたなか:ありがとうございます。そうおっしゃっていただけて光栄です! 今後ともよろしくお願いいたします!