毎年、元旦早朝にパサデナ市で開催されるローズ・パレード。1890年に始まり、全米でテレビ放送もされる大規模な新年祝賀行事だ。パレードの後には全米大学フットボールのローズ・ボウルが開催される。世界各国から参加するマーチングバンドと馬術の行進、カラフルな生花で装飾された数多くのフロート車は圧巻だ。そのパレードに、2019年は日本庭園をモチーフにしたフロートが参加する。
生徒が再建した庭園
NPO団体シエラ・マドレ・ローズ・フロート協会は1917年に初めて同パレードに出場。2002年以降は毎年エントリーする常連だ。今回はシエラ・マドレ・エレメンタリースクールにある日本庭園をモデルにデザインされたフロートを製作している。この日本庭園は1931年に日系人在校生の移民一世であった親たちによって造られたが、真珠湾攻撃が起こった後に破壊され、そのまま放置されていたという。1995年に同校の6年生がこの庭園についての新聞記事を発見、庭園を復元しようと決心し、資金調達のために洗車やベイクセールなどを行った。この売り上げと寄付、そして日系人の庭師リュウ・ワタナベさんの協力を得て同年2月4日に再オープンにこぎつけた。
名称は『調和の庭園』
シエラ・マドレ・ローズ・フロート協会のメンバーは今年3月にこの日本庭園の存在を知り、それにちなんでフロートを『調和の庭園(Harmony’sGarden)』と名付けた。42× 18×26フィートの日本庭園上では、ロサンゼルス在住の琴奏者、鯨岡佐枝子さんが生演奏を披露し、同協会が毎年選出する3人のプリンセスが華を添える。フロートのデザインは公募され、協会の委員の投票で決定。それをローズ・パレードの実行委員会が審査し、承認されると春から製作が始まる。総製作費は約4万ドル。しかしこれらすべてが寄付で賄われ、製作に携わる人々も全員がボランティアだ。骨組みを造り、その上にボディを貼りつけていき、花をあしらう。材料は花や植物、ナッツといった自然のものを使用しなくてはならない。大変な労力と時間が費やされる作業だ。
最終ジャッジは12/31
鯨岡さんは「こういう機会をいただいて、この庭園を通じて、米国に住む日本人として長年やってきた日本の文化を披露できるのはとても光栄です。準備などはいろいろ大変ですが、この有名なパレードに一員として参加できることをうれしく思っています」と、意気込みを語る。12月31日には主催者によって最終ジャッジが行われ、パレードは1月1日の朝8時にスタートする。