石木ダム控訴審「住民翻弄されてきた」 第1回口頭弁論 地権者側 意見陳述

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、反対地権者ら108人が国に事業認定取り消しを求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が19日、福岡高裁(西井和徒裁判長)であった。地権者側は意見陳述であらためて事業の中止を訴え、国側は引き続き争う姿勢を示した。
 一審の長崎地裁は7月、原告側が「不合理」と主張していた佐世保市の水需要予測や県の治水計画はいずれも「合理性を欠くとはいえない」とし、ダムの必要性を認定。原告の請求を退けた。
 原告側は控訴理由書と準備書面で、地裁判決は利水、治水の必要性の両面で「論理的な矛盾や根拠のない事実認定がある」と反論。地権者の石丸勇さん(69)は意見陳述で、ダム事業の影響で地域コミュニティーが破壊され、住民が翻弄(ほんろう)されてきたと主張。「代替地に移転すれば地域のコミュニティーは再現可能」とした地裁判決について「移転した仲間を含む私たちを愚弄(ぐろう)し、事実から目を背けている」と訴えた。原告弁護団長の馬奈木昭雄弁護士は「(行政と住民の)合意形成を目指せるような審理を切望する」と求めた。
 国側は事業認定の手続きは適正として、棄却を訴えた。原告側は今後、佐世保市の水需要予測と、実際の給水量の乖離(かいり)などを追及する方針。次回期日は来年3月11日。

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