災害ボランティアセンターに導入されたIT受付「Peatix」

倉敷市災害ボランティアセンターでITを使ったボランティア受付を導入した。導入されたPeatix(ピーティックス)は、受付の効率化を図り、ボランティアの待ち時間を削減。効率的なボランティアセンターの運営を可能にした。導入に携わったフリーランス・システムエンジニアの戸井健吾さんにお話を聞いた。

**―Peatixとはどういったサービスなのでしょうか?
**オンライン上でチケット販売をするなどイベント管理をするサービスです。セミナーやライブなど1日限りのチケットを事前に購入でき、画面を見せるだけで受付できます。ボランティアに来る人は多い時期で1日1000人を超える日もあったので、事前に無料チケットを購入してもらうことで、受付の効率化を図りました。

実際の画面

**―導入の検討を始めたのはいつごろでしたか?
**発災3日後の7月10日、倉敷市災害ボランティアセンターが立ち上がりました。週末は、海の日を含む3連休が控えていました。マスメディアは連日、倉敷市真備町を報道し注目されており、高速道路のインターチェンジ・新幹線の止まる駅までも近かったこともあり、多くのボランティアが集まっていただくのには好条件でした。
センター内には不安がよぎっていたんです。このままでは、大混乱になりそうなくらいボランティアが来る。そこで、受付の混乱を少しでも避けるため、効率的に受付のできるシステム導入を3連休へ向けて調整していました。

続々と集まる

**―なるほど。その後、3連休にあわせて導入されたのですね?
**結果的にはこの3連休には導入できませんでした。センター運営元である倉敷市社会福祉協議会の人たちは毎日、緊急業務に追われていました。また、ウェブやスマートフォンを使って、新しいことを取り入れるということに拒絶反応もあったように思えます。7月27日に試験導入という形でスタートしました。

**―導入すると何が変わりましたか?
**従来ボランティアの受付は、「名前・住所・生年月日・ボランティア活動保険の有無・初参加か否か」を紙に記入してもらいます。お一人に要する時間は約1分。窓口は多くて10ほど設けていましたので、計算上は1時間に600人が受付できる。ウェブ登録を事前に済ませて来るPeatixは、当日受付は認証画面を見せるだけ。半分以下の時間で受付ができます。最大2000人が訪れた災害ボランティアセンターで、受付待ちのボランティアのイライラの解消に繋がったのではないかと思います。

スムーズな案内

**―導入で困ったことは?
**今年の7月8月は猛暑の日が続きました。センター内にエアコン設置が終わっていない中、ボランティアが列に並んで受付を待つ姿を見つつ、Peatix導入になかなか踏み切れないもどかしさがありました。
「よくわからない」が一番の障壁だった。センター内スタッフは、数日ごとの入れ替わりでローテーションをしていたので、目の前のことに精一杯になりがちです。地元の民生委員さんは高齢の人も多いので、使いこなせないかもしれないという心配もありました。

**―導入してよかったことは?
**受付の効率化は明白でした。多くの人から「導入してよかったね」と声をかけていただき、その後につながるシステム導入のはずみにもなりました。
導入からしばらくして、Peatixで事前に登録してくれるボランティアの割合が見えてくると、逆算して当日のおおよそのボランティア数が把握できるようになり、ボランティアの受入先など事前の準備がしやすくなったのも大きかったです。
また、ボランティアがリピートしてくれる率と同時に、年齢に関係なく使ってくれる人が増えました。岡山出身のブルゾンちえみさんなど有名人が利用してくれたこともあり、ボランティア数もPeatix利用者も想像以上でした。

フリーランス・システムエンジニアの戸井健吾さん

**―今、思うことは?
**いつもは企業内のシステムを構築することが多いのですが、システムを入れるというのは、そもそも何かあってからやるものではなく事前に行うもの。災害で言えば、防災対策です。今回は災害が起こってしまってからPeatixの導入をできたのは、イレギュラーと言っていいと思います。
避難所に前もって用意できるシステムもあるかもしれません。災害ボランティアセンターは、被災者から電話をもらい要望をもらえれば、ボランティアの派遣ができますが、どこに連絡していいのかわからない、知らなかったなど、避難所にいた被災者であってもこのような声が上がっていました。何か手助けとなるシステムが導入できれば、もっと効率的にボランティアにご協力いただけたかもしれません。
ボランティアの人数が減っていくことはわかっていたので、取れたデータから、ボランティアの特性と被災地からのニーズがうまく見える化できたなら、もしかしたら人数減少を少しでも阻止できたかもしれませんね。

いまできること取材班
文章:山口百香 撮影・編集:松原龍之

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