食べ物があるから人は元気になる ~仮設住宅に生活必需品の配布

豪雨災害から4カ月。被災地や被災者が次第に日常を取り戻す中で、未だに仮設住宅で不安な毎日を送っている人たちがいる。そんな人たちにそっと寄り添い、声を掛けたり体調を聞いたりしながら、生活必需品を配布する団体を取材した。

安芸郡坂町は、今回の災害の中でも大きな被害を受けた地域。8月末から、平成ケ浜中央公園応急仮設団地と平成ケ浜東公園応急仮設団地に仮設住宅が建設されており、9月末までに全98戸が完成した。

10月25日。社会福祉法人正仁会のフードバンク事業「あいあいねっと」のスタッフ7人が大きなトラックで、安芸郡坂町の平成ケ浜中央公園応急仮設団地を訪問した。

あいあいねっとが手掛ける「フードバンク事業」とは、市場に出せなくても、食品として十分な安全性をもった食べ物を捨てずに活かす事業のこと。食品関連などのパートナー企業から無償提供された食品を、必要とする人たちを支援する福祉団体などに無償で分配している。同時に、無償提供された食品を有効活用し、地域を元気にする活動、食品ロスを少なくする啓発活動も行なっている。

あいあいねっと 代表の原田佳子さん(右)

代表の原田佳子さんは、広島豪雨土砂災害や東日本大震災の時も支援を行ってきた。その経験から「災害直後は、全国のフードバンク団体が活動するなど、一気に多くの支援が集まるものです。でも、被災者が本当に困り始めるのは、3カ月が過ぎたちょうど今ごろ。じわじわと困りごとが出てくるんです。その時に手をさしのべられたら、と思っています」と話す。

あいあいねっとは、今回の災害に際し、活動に賛同するパルシステム生活協同組合連合会から103万円の支援金を賜った。この支援金をどんな形で支援すれば被災者にとって一番良いか考えた原田さんは、これからも必ず必要であろう生活必需品を配布することに決めた。段ボールに梱包されたのは米、みそ、しょうゆ、砂糖、油、お茶。できるだけ広島県産にこだわった物を詰めてあり、ずっしりと重い。

配布には、あいあいねっとのスタッフと、坂町地域支え合いセンターのスタッフ3人も加わった。

事前に、坂町地域支え合いセンターを介し「物資支援のお知らせ」と書かれたチラシを配布し、必要か否かを問った。当日は「不在なので置いておいてほしい」と知らせがあった家以外は、一軒一軒ノックし声を掛ける。

不在宅のドアには、「ありがとうございます」「お世話になります」と書かれたチラシが貼ってあり、スタッフの顔がほころぶ。不在宅のチラシには、お返しのコメントを添えた。

箱の中は、生活必需品だけではない。手紙も添える気遣いも、きっと伝わったに違いない。
「ありがとうございます」と笑顔を見せる増田節子さん(左)。
スタッフと気さくに会話する上木戸さん(右)。「遠慮せずいただきます」
坂町地域支え合いセンターのスタッフに近況報告する大廻さん(右奥)

「家の1階に土砂が流れ込んで、理容室を廃業したのよ」と話す大廻保子さん。自宅は坂西にあるが、災害が起こった時は避難していて無事だった。理容院は続けられなくなり、常連客から散髪の依頼があると、他の店舗を紹介していたという。しかし、「どうしてもお願いしたい」という声に応え、現在、出張散髪を行っている。

今年いっぱいをめどに、お客さんのために家を修理し、リフォームして店の再開を予定している。理容室の道具や資材などは、仕事仲間が助けてくれるという。大廻さんは「頑張らないとね」と前を向く。

「節約の日々。助かります。ありがとうございました」と書かれたお礼状

あいあいねっとはこの日、段ボール箱95個、11月1日にも呉市仮設住宅にて61個の支援物資を配布した。数日して、お礼状が届いたという。

生活に必ず必要な物だから、必要な人のところへ。

「食べ物があるから人は元気になり、他者と絆が深められる」と話す原田さんの気持ちは、きっと伝わったに違いない。

 

いまできること取材班
文章・門田聖子(ぶるぼん企画室)
撮影・堀行丈治(ぶるぼん企画室)

© 一般社団法人助けあいジャパン