ガンダムブランドを支えるDNAとは? サンライズ設立46年の歩み、今後の展望 小形Pが語る【インタビュー】

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ガンダムブランドを支えるDNAとは? サンライズ設立46年の歩み、今後の展望 小形Pが語る【インタビュー】

アニメサイト連合企画

「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」

Vol.8 サンライズ

世界からの注目が今まで以上に高まっている日本アニメ。実際に制作しているアニメスタジオに、制作へ懸ける思いやアニメ制作の裏話を含めたインタビューを敢行しました。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」、Facebook2,000万人登録「Tokyo Otaku Mode」、中国語圏大手の「Bahamut」など、世界中のアニメニュースサイトが連携した大型企画になります。

1979年に誕生、以来40年近くにわたり続く『ガンダム』シリーズは、日本のアニメ界を代表する作品だ。ガンダムを生み出したのは、東京都杉並区上井草に本社を持つサンライズである。

設立から46年、これまでに数え切れないほどの傑作を世に届けてきた。近年は『ラブライブ!』シリーズや『コードギアス』シリーズなどのヒット作がある。『ガンダム』シリーズも『ガンダムビルドダイバーズ』や『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』などさまざまに展開する。

2018年夏には、数々の映画を世界的大ヒットに導いてきたLEGENDARYとのハリウッド実写版企画も発表され世界を沸かせた。

そんなサンライズは、どうやって作品を生みだし、作るのか。『テイルズ オブ ジ アビス』、『犬夜叉 完結編』、『機動戦士ガンダムUC』、『ガンダム Gのレコンギスタ』、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』等、多くの作品を手掛けてきた執行役員IP事業本部第1企画制作部ゼネラルマネージャーで、第1スタジオのプロデューサーでもある小形尚弘氏にお話を伺った。

サンライズとはどんなスタジオなのか? その強さの秘密は? そして今後ファンとどうやってつながっていくのか?

[取材・構成=数土直志]

サンライズの象徴でもあるガンダムの石版が本社入り口には飾られていた

本社エントランス内は宇宙船内を彷彿とさせる近未来的な空間だ

本社から徒歩圏内にある第1スタジオ。今回のインタビューはここでお話を伺った

『機動戦士ガンダムUC』はじめ数々の名作をプロデュースしてきた小形プロデューサーが語ってくれた

■企画誕生! サンライズアニメはこう生まれる

――サンライズの立ち上がりからお話いただけますか。

小形

もう40年以上の歴史があるスタジオですから、その変遷はとても複雑です。

僕の入社はちょうど『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』をやっていた時期、1997年で20年ぐらい前になります。

最初は創映社として1972年に設立されて、その後1976年に日本サンライズとして事業拡大しています。日本サンライズからいまのサンライズになったのは1987年です。

その後、1994年にバンダイナムコグループ、当時のバンダイグループの一員になったのは大きな変革だったと思います。

――最初の作品は?

小形

最初は東映動画さんや東北新社さんから受託した作品が多かったのですが、自社オリジナル作品の最初となるのは1977年の『無敵超人ザンボット3』ですね。そして1979年に『機動戦士ガンダム』が放送開始しました。

――それ以降、現在まで数々の作品を生みだし続けています。そうした企画はどうやって立ち上がるのでしょうか。

小形

企画や作品の成り立ちにはいくつか種類があるんです。まずガンダムといったバンダイナムコグループの重要なIPの映像化です。マーチャンダイジングや映像ビジネスをグループ全体でどう展開していけるかが肝なんです。

最近は『ラブライブ!』シリーズのようにグループ外の会社とも連携する企画もありますし、あとは原作もの。

たとえば『犬夜叉』では小学館さんや読売テレビさんと一緒にやっていく。スタジオのプロデューサーが次の作品をどう作っていけるのか、タッグを組むクリエイターがどういう作品を目指したいかをすり合わせながら企画していってます。

――ガンダムの話がでましたが、ガンダムというよく知られたコンテンツで常に新しい企画を出していく苦労はありますか?

小形

長く続いているので、伝統は大事にしないといけません。ただそれだけだとお客さんの年齢がどんどん上がっていってしまい、若い人たちが入りづらくなってしまう。

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(以下、『オルフェンズ』)や『ガンダムビルドダイバーズ』(以下、『ビルドダイバーズ』)は、昔から応援してくれる人たちを大事にしつつも新しい切り口で展開したことで、若い世代の方々にも受け入れていただいています。

一方で『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』(以下、『UC』)だったり、11月に劇場公開した『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ) 』(以下、『NT』)は、どちらかと言えば昔からのファンを大事にした作品を目指しています。

――小形プロデューサーが直接手がけた作品でいえば、『UC』がとてつもないクオリティで驚きました。なぜこんなすごい作品が可能になるのですか?

小形

『UC』はイベント上映という形で始まったのですけど、ガンダムOVAの血塗られた歴史というか(笑)。

僕が入社した時で『Endless Waltz』、『機動戦士ガンダム第08MS小隊』。その前は『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(以下、「0083」)。錚々たる面々によるハイクオリティな作品があるからこそのプレッシャーがあります。クリエイターも、制作も下手なものは出せないと。

――そうした心意気がいまのガンダムブランドを支えて続けているわけですね。

小形

そうですね。『0083』は今みてもすごいなと思います。とても普通では描けないし、しかも当時はセル画でやっていたんですから。

――新しいオリジナル企画、最近では『ラブライブ!』もそうですし、2006年から続く『コードギアス』も。ああいった企画は、どうやって生まれるのですか?

小形

「サンライズはオリジナルの作品を作る会社だ」と先輩からずっと教わってきて、自ずとみんなにそのDNAが染みついている。

オリジナル作品の企画から制作までできて一人前のプロデューサーという気概はありますね。オリジナル作品の権利を持ってビジネスをしていくのはサンライズならではの特徴だと思うんです。

――プロセスとしてはプロデューサーが企画を立てて、会議に出すのでしょうか?

小形

そういう場合もありますし、監督やクリエイターからこういうのがやりたいというのもあります。

逆にクリエイター側にも、サンライズなら自分のオリジナル作品をやれる可能性があると思ってもらえるのは大きいはずです。

――もうひとつ大きなジャンルとして原作ものがありますね。

小形

実は原作ものはハードルが高いんです。ただサンライズが原作ものをやる時は、そのまま100パーセント再現するではなくて、何かしらプラスアルファを入れて、サンライズらしい映像化をしろという教えがあります。

例えばプラスアルファでアクションに力をいれましょうとか、ストーリーのこの部分を掘り下げましょうとか。自分たちのオリジナル物を組み立てるのと同じような方法論で制作しています。

マンガでの描写とアニメーション映像での描写は違いますので、その違いを大切にして原作者さんや編集サイドと話をしながら、その中でサンライズのオリジナル性を出せるように意識しています。

長い歴史の中で『機動戦士ガンダム』をはじめ数多のオリジナル作品が生まれてきた

→次のページ:メカ作画の強さ、CGへの挑戦

■メカ作画の強さ、CGへの挑戦

――いまサンライズ全体でスタジオの数はどのぐらいですか?

小形

CGスタジオも含めて9つですね。

――それはバンダイナムコピクチャーズ(※1)も含めてですか?

小形

いや、含めずに9つのスタジオです。スタジオによっては複数作品をやっている場合もあって、例えば第1スタジオは2ライン(※2)に近い感じです。

いまサンライズでは、9つのスタジオを第1企画制作部と第2企画制作部に分けて、第1のほうを私が、第2のほうを『ラブライブ!』のプロデューサーの平山(理志)がゼネラルマネージャーとなって企画制作しています。

ちなみに、バンダイナムコピクチャーズはA、B、C、D、E、Fの6つのスタジオと、デジタル動画を手掛ける大阪スタジオがあります。

(※1)バンダイナムコピクチャーズ:2015年にサンライズから分社化。ファミリー向けのキャラクターマーチャンダイジング中心の作品を得意としている。

(※2)アニメーションスタジオでは作品ごとに制作チームが組まれており、チームごとに“ライン”と呼ばれている。

――スタジオごとの特徴はあるんですか?

小形

かなりあります。もうほぼ10年間、10ぐらいのスタジオが常時稼働していますが、それぞれがしっかりと特徴を出しています。

プロデューサーがプロジェクトのトップになって主要スタッフを決めたり、経営を独立採算のかたちでやっているので、プロデューサーの色がかなり出やすいです。

――各スタジオの結束は強いのでしょか?

小形

良い意味で皆ライバル同士ですね。他のスタジオの作品のことを意識して、俺のほうがすごいものを作ってやると。

これが『ガンダム』から『ラブライブ!』まで、いろんな幅広いジャンルをやっていける強さじゃないかなと思います。

それと一番大きいのはバンダイナムコグループの一員ということで、グループ会社と連携してゲームにもなるし、マーチャンダイズも進む。ビジネスに大きな広がりを持てます。

自分たちが作ったものを世界に広げる可能性があるのも含めて、僕らにとっても非常にやりがいがあります。

――業界全体でCGの導入が進んでいますが、サンライズのスタジオの中ではどのようになっていますか?

小形

作品によって違いますね。D.I.D.スタジオというCGに特化したスタジオは『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』やバンダイナムコピクチャーズの『アイカツ!』や『バトルスピリッツ』シリーズのCG全般を担当しています。

その他にも、『UC』、『NT』ではスタジオの中にCGのスタッフが常駐してもらっていたり、『ラブライブ!』は他のCG会社さんと組んだり。作品の方向性によって、組む相手を変えながらというのが現状です。

――例えば11月30日に公開された『NT』ではどの程度がCGなのでしょうか? メカのシーンなどは?

小形

これもサンライズの特徴ですけど、フル3Dの戦闘シーンは『THE ORIGIN』ぐらいです。

1スタ(第1スタジオ)の『UC』から『ガンダム Gのレコンギスタ』、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』、『NT』に続くライン。3スタ(第3スタジオ)の『ビルドダイバーズ』、『オルフェンズ』はほぼ9割が手描きです。

『UC』では、ユニコーンガンダムの変形シーンは3Dにしましたが、それ以外は全部手描きです。

自分で頼んでおきながら、よくこんなメカを描けるなって思うぐらいです。『NT』も当初は半分ぐらいを3Dと考えましたが、結局手描きになってしまいました。

――その理由はこだわりですか?

小形

クリエイターから手描きでやりたいと。世界を見廻しても手描きでこのクラスのロボットアニメをやれるのは、サンライズしかないはずです。あとは数社だけ。

メカを描く若い人はそんなにおらず、仕事が随時あるところも限られますから。

個人的にも、手描きのメカは見ていて気持ちいい。それで手描きにしたいんですけど、ただ最近の問題点は皆さんが年齢を重ねてきているので、体力的な問題もあります。

あとはメカ作画の動画を割れる人(※3)が少ない。年々メカを手描きでやるのは難しくなって、考えないといけない頃合いにきています。

今後は3Dを取り込みながら、ここぞというところに手描きのリソースを使っていくというのが流れになるんじゃないかと思っています。

(※3)アニメーションの制作では原画アニメーターの描いた絵に、動画アニメーターがさらに細かい動きの絵をつけていく。これを動画を割るという。

――先ほどから出てくるCGスタジオのD.I.D.は、どういうスタジオで、いつ頃から立ち上げたものですか?

小形

もともとはサンライズのデジタル部門として1990年代に立ち上げました。

作品としては『機動戦士ガンダム MS IGLOO』が始まりで、あとはサンライズの作品に出てくるモニター類だったりCGカットを担当していました。

――そうした取り組みをさらに進めてフルCGをやるといった構想はあるのですか?

小形

僕は旧い世代なので手描きのアニメーションを見て、グッとくるものがあるのですが、今の世代は3Dに対するハードルはない状態です。

うまくバランスを取りながら世界展開をするようなマス向け作品はフル3Dを積極的にやっていくべきだと思います。

ただ逆を返すと、ディズニーさんは手描きのメカアニメは絶対やらないと思うんですよね。ニッチな部分ですがトップを取れる、そんな強みがあると思います。

――手描きのメカ作画で人がいないとありました。そうしたところの対策はあるのですか?

小形

サンライズが過去にやっていた作画塾を今年から再開しています。作画監督やキャラクターデザイン、原画クラスをどんどん育てようというプロジェクトで、第1期からの卒業生はすでに現場で活躍していて、『NT』のキャラクターデザインの金(世俊)くんや、『ラブライブ!』のキャラクターデザインの室田(雄平)くんも作画塾出身です。

――作画塾のもともとのスタートは?

小形

2005年から2011年まで6年間続けて、人材輩出と成果が出ました。

そこで一度、落ち着いたのですけど、昨今の人手不足や、育てる環境の必要性を再認識して、第2企画制作部の平山を塾長として再開することになりました。

塾生たちが再び会社の基盤になってくれるのは大事なことですから。会社としてもそこに支援したいと。

1年間勉強してもらって、原画マンとしてしっかりやっていけるような育成を目指しています。

――環境を整えば、人が育ってくということでしょうか?

小形

才能自体を育てるのはなかなか難しいです。ただサンライズはスタジオ数や作品が多いので、才能のある人には様々なチャンスが転がっています。

――腕があれば、作画塾に参加して、将来が開ける。

小形

新人の作画マンはなかなか食べていくのは大変ですから。そこを含めて一人前になるまでのサポートをし、さらにサンライズの作品でチャンスを得てというかたちです。

→次のページ:世界で通用を目指す サンライズのグローバル展開

■世界で通用を目指す サンライズのグローバル展開

――海外の話も伺いたいのですが。例えばガンダムですと、いまガンプラが海外でも人気ですね。

小形

ガンダムは、お蔭様でアジア地域で非常に人気が高まってきています。ガンプラも全体の3割を日本以外のアジア中心の海外で買ってもらえている。

今度『機動戦士MOONガンダム』のガンプラが発売されますが、その半分が海外からの予約でした。

ただアジアでは非常にメジャーになりつつある一方、北米ヨーロッパではまだまだ知名度は十分ではありません。

最近アメリカに行って思ったのが、どうしても北米では等身大ヒーローが市場に広がりやすく、巨大ロボットものであるガンダムをゲームなども含めて、北米とヨーロッパにどうリーチしていくかは、まさにバンダイナムコグループとしても課題になっています。

――小形プロデューサーは今年の夏にロサンゼルスでAnime Expo 2018に登壇されていました。手応えは感じられましたか?

小形

『UC』もあり、『オルフェンズ』を北米で配信したり、アメリカでもガンダムの広がりが出てきています。ガンプラも去年は北米で過去最高に売れました。

アメリカの人たちは完成品のフィギュアのほうがいいのかなと思ったりもしましたが、Anime Expoで登壇した川口名人(バンダイスピリッツの川口克己氏・ガンプラの第一人者)に対する食いつきを見ると、どこの国でも好きな気持ちは同じなんだなと思いました。

ガンダムはアメリカでまだ勝負できる余地があるとポジティブに考えています。

Anime Expoで発表したLEGENDARYと共同開発の実写ガンダムも今後控えています。

それが完成する頃にはグループ含めて、ガンダムをグローバルに広げられる準備を整えたいです。

――実写といえば『レディ・プレーヤー1』にもガンダムが出ていました。

小形

あれは許諾をしたかたちです。しかも、ありがたいことにかなりおいしいところで使ってもらえました。僕も試写会で見せてもらって、「ぐっ」ときました。

――『カウボーイビバップ』も海外の実写企画もでています。自社作品を海外で実写化する流れがあるのですか?

小形

『カウボーイビバップ』に関しては、海外からの要望が非常に強く、先方から熱いラブコールをいただきました。

『ビバップ』をはじめサンライズほどIPを保有している会社はないと思います。他の作品にも海外で展開できる可能性はあると思います。

――海外とのつながりでもうひとつ。サンライズの中に海外出身のスタッフってはどのくらいおられますか?

小形

海外出身のスタッフは今はまだ少数です。他の会社だと海外プロダクションと共作して、その繋がりから発展していきますが、サンライズは自分たちで作るので、なかなかそうした繋がりがないのが実情です。

そんな中でもサンライズが好きで集まってくれる人たちもいて。『NT』のキャラクターデザインの金くんは韓国籍ですけど、富野(由悠季)監督の『無敵超人ザンボット3』が大好きだったとか。

――新卒採用でアニメーターや制作進行の募集がありますが、そこに海外から応募するのは?

小形

それはあります。海外籍のかたも応募できます。今年の新人でも制作に1人入っています。

――海外のアニメファンは日本のアニメを応援しているんだと示しにくいところあるのですが、その応援したい気持ちはどうすればスタジオに伝わりますか?

小形

今だとTwitterなどSNSで応援してくれると伝わりやすいです。あとはガンプラを買ってくれたり。

この間も香港で限定のサザビーを販売した時に長蛇の列が出来て、応援してくださる方がいることを実感しました。

今後は海外のファンとのコミュニティをどういうかたちで私たちと繋げていくかだと思います。頑張りたいですね。

――最後にファンへのメッセージをいただけますか。

小形

日本国内でサンライズは、『ガンダム』や『ラブライブ!』といったオリジナル作品を作っている会社として認識されています。それを世界中に広げたいですね。

サンライズといえば、マーベルさんやディズニーさんと比べられるようになりたいです。

そのためにもこれから制作していく作品は、LEGENDARYとの実写版ガンダムも含めて、よりグローバルに勝負していきたいと思っています。

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数土直志