連携中枢都市圏 佐々町“離脱”へ 背景に合併「抵抗感」? 佐世保市の求心力低下を不安視する声も

 長崎県佐世保市を中心とした周辺市町でつくる連携中枢都市圏の形成で、北松佐々町議会は都市圏に参加する議案を否決した。人口減少社会に対応するため、政策やインフラ整備で広域連携する重要施策だが、中心市のすぐ隣の町が不参加となり、都市圏が十分に機能するのか懸念が広がっている。土壇場の“離脱劇”の背景を探った。
 19日夕方。佐世保市で政策立案を担当する企画部には、緊張感が漂っていた。ホワイトボードには佐々町議会の審議結果を踏まえた対応策が記されていた。「否決」の一報が入ると担当者は慌ただしく市長室へ。ほかの職員も関係部局との調整に追われた。
 市は2015年に周辺自治体と連携中枢都市圏の形成を目指す方針を表明。周辺市町と協議を重ね、最終的に11市町との連携を決めた。この冬に各市町議会で一斉に都市圏形成の議案を提出したが、佐々町議会のみ否決。広域連携の地図の真ん中に、ぽっかりと「大きな穴」が空く事態となった。
 佐世保市は20日の議会運営委員会で佐々町議会が否決した理由を説明。「佐々町は人口が減少していない」「財政負担が増える」といった反対意見が出たことを報告した。しかし、市議からは「最初から分かっていたことだ。突然離脱する理由にはならない」と不満が噴出。ある重鎮市議は「禍根を残す否決だ。市は町に対して連携の意義を十分に説明していたのか」と憤った。
 佐々町が離脱した背景について、複数の市議は、かつて「平成の大合併」で佐世保市との合併を拒んだ経緯を踏まえ、「広域連携への抵抗感がある」とみる。実際にある町議からは「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)やクルーズ客船誘致など佐世保市の重要事業に協力をお願いされるだけ」「平等の立場ではない」といった疑念も聞こえてくる。
 ただ、佐世保市も町議会の開会直前まで、副市長を交えて町側と水面下で協議してきた。町が重要課題に掲げているごみ処理の問題で、将来的な連携を検討すると“約束”。それでも町は町議を説得することができなかった。
 佐世保市は佐々町との連携をあきらめ、まずは周辺10市町で都市圏を形成する。しかしある市議は「佐々町が引き金となり、都市圏がスタートした後も離脱が連鎖するのではないか」と危惧。圏域のリーダーとなる佐世保市の求心力や連帯感の低下を懸念している。

◎連携中枢都市圏
  人口減少に対応するため、人口20万人以上の中枢都市と周辺自治体で形成し、政策やインフラ整備などで連携。地方創生政策として国が財政支援する。佐世保市は「西九州させぼ広域都市圏」の形成を目指し、平戸、松浦、西海各市、新上五島、東彼川棚、波佐見、東彼杵、北松佐々、小値賀各町と、佐賀県の伊万里市、有田町の11市町と連携する方針だった。

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