飲食にフォーカスした博物館 北ウィリアムズバーグにある「Museum of Food and Drink」

モスクワ出身のイリナ。日曜日の不定期プログラムで、ロシアのダンプリングを紹介したそう

ありそうでなかなかないのが、飲食に特化した博物館。「ロンドンの『British Museum of Food』と、ニューヨークの『Museum of Food and Drink』(以下MOFAD)は絶対に行きたい」と言う私の知り合いは、日本で飲食を研究する専門家です。先日ニューヨークに来たときは待ってましたとばかりに、早速足を運んでいました。

私も昨年訪れ、フォーチュンクッキーの製造デモンストレーションを見たり、サンプリングフードを試食したりと、とても楽しめました。

**展示+イベントで世界の食を紹介**

「MOFADは、社会と食文化をつなぐ体験型スペースです。展示物を見るだけではなく、味わったり、触ったり、匂いを嗅いだりと五感で体験ができる楽しい仕掛けを心掛けています」と紹介するのは、フロアマネジャーのイリナ・グロウシェライア。「子どもから大人まで誰もが楽しめます。だって食べ物に興味がない人はいないでしょう?」。

歴史、背景、功績から料理の仕方や食べ方まで、さまざまな食文化を垣間見られる(左)1958年に出版された『ミシュランガイド』も展示されている(右)

現在の常設展は、中華料理にフォーカスした「CHOW」。約170年に及ぶ中国人移民の足跡は、料理の発展と共にありました。当地で人々に認知され身近な料理になるまでの軌跡が、分かりやすく紹介されています。

食べ物を「考える」場所

MOFADでは展示以外に、参加型プログラムやワークショップにも力を入れています。「サパークラブ」(隔週)は、館内にテーブルを設置し、食の歴史や調理法を紹介しながら、実際にディナーを楽しんでもらうイベント。シェフを招いての教育プログラム(毎週)も。最近では、地元のベジタリアンレストラン「Superiority Burger」のオーナー、ブルックス・ヒドリーや、「Talde Brooklyn」のデール・タルデを招いて講演を行ったそうです。

普段チャイナタウンで食事をしながら、中華料理がどのようにアメリカで広がっていったか? なんて考えませんよね。「普段考えないことを『考える』きっかけになったらうれしいです」とイリナ。常設展「CHOW」は2019年3月まで。その後はアフリカンアメリカンフードの企画が予定されているそうです。

All Photos: © Kasumi Abe

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