ボルボV90クロスカントリーで東京から試される大地”北海道”へ。1400km、グランドツーリングの旅:後編

ボルボ V90クロスカントリー

雪を求めて北海道内を彷徨うものの...

昨日の明け方東京を発ち、無計画の行き当たりばったりに北へ。八戸で絶品の昼ご飯を食べ、青森港から津軽海峡を渡って北海道上陸と、半日で1000kmあまりを走行したボルボ V90クロスカントリーと我々取材班。続く後編では、函館をスタートし、ゴールの新千歳空港まで北海道内を雪を求めて駆け巡るのだが...

前編の模様はこちらから

二日目、朝。残念ながら天候は小雨。気温は高く、雪になる気配はまるでない。

函館と言えば思いつくのはずばり朝市。とこれまたベタな展開だが、豊かな海の幸を目の前にホテルの朝食をとるのも無粋なわけで、我々取材班はJR函館駅と函館朝市の間にある駐車場にクルマを停め、傘を片手に朝市を散策することにした。

店頭には、新鮮な海産物がずらりと並び、こちらのテンションも上がる。店員さんからも「お兄さん、カニあるよ~」「ウニ、美味しいの、どう?」などと次々に声が掛かる。どうせなら今年の正月用の買い出しも済ませてしまおうか。

朝っぱらからスミマセン! いっそのこと思い切って豪勢に行ってしまおう! とも思いながら、市場内をさらにふらふらと歩く。もうカニやらイクラやらウニやらワカメやらと、多すぎてよくわからなくなってきた。

一ヶ月後に控えた健康診断を前に、己の身体の諸々の数値が気になるタイミングではあるが、「ダイエットは常に明日から」とか、「北海道に滞在中は仕方がない」などと自分に言い聞かせ(謎)つつ、丼ものに目星をつけてオーダー。今日も長丁場になりそうな気配なので、しっかりと胃袋に放り込む。やっぱり新鮮で美味い。

ボルボ V90クロスカントリー
ボルボ V90クロスカントリー

ひと通り堪能したと思ったがカメラマン氏は物足りなかったらしく、なぜかここにきてモツ煮とご飯を注文。「まだ喰うんかい」という突っ込みをヨソに、美味しそうに掻き込んでいる。まぁ、函館に到着した日の夜も海鮮だったから、ぼちぼち海の幸じゃないものも食べたくなるのも頷けるのだが……。

さて腹ごしらえをした我々は、実は今回のテーマである雪道ドライブの『雪』を求めて、ニセコへとステアリングを向けた。途中、函館ローカルの”ラッキーピエロ”(ご当地バーガー全国1位獲得をしたハンバーガーチェーン/総カロリー1860kcalの函館山ハンバーガーが有名)を発見したが、さすがに自粛し、先を急ぐ。しかし残念ながら出発地である函館市内はもちろん、道央道、そして豊浦でも、道に雪は皆無。雨、ダウンジャケット要らずの気温、そして霧という、まったくロケには適さず、今回の企画意図にも合致しない天候に見舞われたのだった。

豊浦で一般道に下り、昆布岳をかすめてニセコアンヌプリへと向かうと、道の両側には残雪も見えてきたが、基本的に路面は除雪済みのウェット。時折、山の北側のコーナーのみ残雪が現れるという、ドライバーにとってはイヤな路面状況となった。こんな時にこそV90クロスカントリーの安心感はありがたい。

ボルボ V90クロスカントリー

雪道を求めた我々取材班は、ふと目の前に現れた林道へと入り込んでみた。入り口こそ舗装が敷かれていたが、進むにつれていつしか道は未舗装に。雪と砂利と泥、そして轍には雨の流れるグラベルを進んでいく。高い車高のクロスカントリーだからこそ、それなりにラフな路面でも入っていける。SUVほどではないが、行動範囲の広さは間違いなく美点だろう。冒険とまで仰々しいものではないにせよ、ちょっとした非日常に踏み出すことも、このクルマと一緒ならば容易いはずだ。

ボルボ V90クロスカントリー

そのまましばらく林道を進んだが、結局のところ雪道と呼べるレベルではなかったので引き返すことに。もちろんUターンをするのだが、上空から見た鳥観図のような360°ビューカメラによって車両の周辺を確認できるので、狭い場所の取り回しも安心。オフロードモードに入れておけば、下り路面はヒルディセントコントロールも機能する。滑りやすくぬかるんだ林道も無事にクリアして、元の舗装路へと戻ることができた。

再びニセコ周辺をさまようも雪道は望むべくもなく、ますます霧が濃くなる始末。海外からパウダースノー目当てで来日した観光客も当てが外れたようで、北海道民の憩いの場であるセイコーマートが賑わっている。あと一日後ろにずれていれば寒気団が到来し、この時期の北海道らしい天候になったというのに……。と空模様を呪いつつ、気分を切り替えて余市へとステアリングを切った。

ボルボ V90クロスカントリー

ロングドライブの実力を十二分に発揮してくれたV90クロスカントリー

ちなみに「北海道の道は真っ直ぐで」というのはイメージに過ぎない。確かに美唄市から滝川市にかけて29.2kmもの直線が続く日本一直線な「国道12号線」という存在もあるが、実は山もあり谷もありの北海道、それ相応のワインディングもある。ニセコから余市にかけても、山あいを抜けていく感じの楽しい道だ。雨が上がり、遠く石狩湾には西日が反射している。

ご存知の方も多いだろうが、余市はNHKの朝ドラ『マッサン』の舞台にもなったニッカウヰスキー誕生の地であり、今も現役でウイスキーを生産している。今回の旅のゴールである新千歳空港まで運転するためもちろんアルコールは厳禁だが、その雰囲気だけでも感じようと余市蒸留所へ。

駐車場は蒸留所の裏手。ゲートをくぐると、巨大なポットスチル(蒸留器)のモニュメントがドーンと現れる。これだけでも気分は上がる。クルマのドアを開けると、敷地内にはほのかにウイスキーの香りが漂っているのがわかる。発酵棟の付近ではその香りが強まり、貯蔵庫を覗けば樽の香りが加わってさらに心地がいい。そして蒸留棟では世界でここだけという石炭直火蒸留の工程を目にすることができた。発酵が終わったもろみの入る大きな釜を石炭で炊き、出てきた蒸気を冷却してアルコール濃度を高める。なんとも原始的で古めかしいこの蒸留方法は火加減が難しいそうだが、その伝統的な製法を今もなお職人たちは守っているのだという。

ボルボ V90クロスカントリー

そんな職人たちが作り上げたウイスキーを目の前にして、手ぶらで帰るわけにはいかない。というわけで「余市蒸留所限定」とやらを1本仕入れてしまった。筆者もご多分に漏れず“限定”の文字に弱い。酒好きと名のれるほど呑めるわけではないではない筆者だが、なぜか気持ちはまだ収まらず売店をもうひと回り。するとなんと「ノンアルコールハイボール」なるものが冷蔵庫で冷えているではないか。ハイボールなのにノンアルコールとはなんとも不思議な飲み物。その上カロリーも糖質もゼロで、さらに食物繊維も摂れるとは。明らかに食べ過ぎている2日間、ここはこの機能性表示食品とやらで帳消しにしようと決めた。

ボルボ V90クロスカントリー

ラベルのノンアルコールの文字を再度確認して、カメラマン氏と乾杯! フレーバーはまさにハイボール。炭酸の加減もちょうどいい。ただしアルコールは0%。安心して再びクルマへと乗り込んだ。新千歳空港まで残るは約110kmだ。

すっかり日も落ちかけて、いよいよタイムリミットも迫ってきた。小樽→札幌経由で道を急ぐ。「小樽は運河沿いが夜も綺麗だよな」とか、「小樽にうまい寿司屋があるんだよな」とか、「札幌時計台の工事はもう終わったんだよな」とか、「HTBは移転したんだよな」とか、「スープカレーならあの店だよな」などと頭にはいろいろ浮かんだが、残念ながら今回は立ち寄る時間がない。また次回、必ずや。というわけで、小樽インターから札幌自動車道へと駆け上がった。

シートヒーターとステアリングヒーター、そしてさらにマッサージ機能をオンにすれば、V90クロスカントリーはもう無敵、どこまででも走っていけそうだ。雨は相変わらず降っているが、実に心地がいい。道央自動車道を経て、最終目的地である新千歳空港へと到着したのだった。

ボルボ V90クロスカントリー
ボルボ V90クロスカントリー

ガソリンスタンドで軽油を入れ、洗車をしてもらう。わずか2日間であったが行動を共にしたボルボ V90クロスカントリーは、とても頼もしい相棒だった。頼り切っていた感もある。1400kmを越える距離を1泊2日という短期間で走り切る。正直ハードだし、特殊な走り方だと思う。しかしそんな走り方をしても、クルマにはなんの変化もなく終始安心してステアリングを握ることができたし、身体の疲労も驚くほど少なかった。いいパートナーになれたと思う。

ボルボ V90クロスカントリー

クルマに乗って、遠くまで走る。文字にしてしまえばただそれだけのことだが、公共交通機関であっと言う間にたどり着いてしまう旅とは違った、行程自体を楽しむ旅としてクルマの旅は味わい深いものがある。日本でもグランドツーリングは十分すぎるほど堪能できる。それもたったの2日間で(笑)。

しかし今回の旅、課題が多く残ったのも事実。けっして仙台の牛タンや盛岡の冷麺や小樽の寿司や札幌のスープカレーが、ではなく「雪」だ。スノードライブもまた、V90クロスカントリーの実力を発揮できる条件であることは間違いない。それを体験せずしては、どうもしまりが悪い。というわけで、ボルボ・カー・ジャパンさん、近日中の再挑戦を求む!

[Text:オートックワン編集部/Photo:佐藤正巳,茂呂幸正]

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