メドベージェワ選手、涙ながらにファンへ感謝 「最悪の瞬間」欧州・世界選手権絶望的に

By 太田清

スケートカナダで3位になったメドベージェワ選手=10月27日、ラバル(共同)

 平昌冬季五輪フィギュアスケートで金と銀メダルを分けたロシアのアリーナ・ザギトワ、エフゲニア・メドベージェワ両選手の直接対決が話題となったロシア選手権だが、メドベージェワ選手にとり結果はあまりに残酷だった。21日の女子ショートプログラム(SP)で、ザギトワ選手が2連続3回転など三つのジャンプを決め、80・62点で首位に立った一方、メドベージェワ選手は転倒などのミスが相次ぎ、62・24点で14位に沈み明暗を分けた。 

 フリーの演技が残っているものの、メドベージェワ選手の欧州、世界選手権代表入りは絶望的となり、スポーツ紙スポルト・エクスプレス(電子版)は「(競技が行われた西部)サランスクの惨事」との見出しで「自らのキャリアで最も悲劇的な瞬間を迎えた。今シーズンは事実上終わり、今は将来について考えることができる」と評した。 

 SPの前から、多くのファンが競技場の前に集まりメドベージェワ選手を応援する横断幕を掲げ、リンクでもファンの数は「ザギトワ選手を応援する人よりもはるかに多かった」(ニュースサイト「ガゼータ・ルー」)が、メドベージェワ選手はその期待に応えることはできなかった。 

 浅田真央選手など多くの優秀な選手を育成してきたロシアの名コーチ、タチアナ・タラソワさんもテレビの生中継での解説で「彼女はつらいけど、私たちもつらい。練習でもこんな彼女を見たことはなかった。彼女は今、とてもつらい人生の段階を克服して、成長しているんだと思う。でもこれがスポーツなの」と、沈んだ声でコメントした。 

 メドベージェワ選手自身は競技後、ロシア政府系テレビ第1チャンネルに対し短いインタビューに答えただけで、会場を後にし、ショックを隠せない様子。その後、インスタグラムに投稿。「(ひどい演技だったにもかかわらず)私とコーチのブライアンは観客の皆さんの(応援してくれる)反応を見てびっくりしました。今言いたいことはありがとうの言葉だけ。今日の結果がどのようなものであれ、私は自分への信念、すべてがうまくいくとの確信を得ました。なぜならファンの皆さんがこれほど私を応援してくれたから、悪いことが起こるはずもないって」と、目に涙を浮かべながらファンへの感謝の言葉を語った。 (共同通信=太田清)

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