(1)銀行統合承認 長期戦の末 新たな一歩

 「行員も取引先の皆さまも相当心配し、不安に思われただろう。よくここまで応援していただけたなと思う」。十八銀行(長崎市)の森拓二郎頭取は2年半に及んだ“長期戦”の感想を記者に問われ、感慨深げな表情を見せた。だが、こうも述べた。「これがゴールではない。やっとスタートラインに立てた」

 十八銀がふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)との経営統合に基本合意したのが2016年2月。そして今年8月24日、公正取引委員会(公取委)の承認を得るに至った。その夜、森頭取、柴戸隆成FFG社長、FFG傘下の親和銀行(佐世保市)の吉澤俊介頭取は福岡市内でそろって会見に挑んだ。

 統合の主眼は県内二大銀行の合併により、これまでの“消耗戦”をやめることにある。重複する拠点や人員を集約し効率化。そこで生まれた余力を企業支援や地域振興に振り向ける構えだ。しかし新銀行が圧倒的な県内シェアを握り、競争が制限されれば、金利引き上げなど取引先に不利益をもたらさないか-。公取委はこう警戒し、一時は排除措置命令もちらつかせた。

 昨年2度も統合延期を余儀なくされた銀行側は今年5月、シェアを引き下げるため、やむなく債権譲渡という奥の手に踏み切る。両行の県内全取引先約1万6千社に、他の金融機関への借り換え意向を調査。譲渡する金額を約1千億円弱まで積み上げ、これが審査通過の決め手となった。

 現在、債権譲渡は金額ベースで半分程度実行した。ある他行の支店長は「追加で打診され、断ったケースもある」と明かすが、柴戸社長は「順調」という。部長クラスを含む相互出向も行い、来年4月統合に向け準備を加速させている。

 一方で十八、親和の合併時期は、システム統合準備に万全を期すとの理由で半年延ばし、20年10月とした。システム統合が終わるのは21年1月の予定で、多くの顧客が「統合効果」を実感できるようになりそうだ。吉澤頭取は中間決算会見でこう強調した。「お客さまに不便を掛ける時間はできるだけ短く、やれることは早く」

経営統合計画承認を受け記者会見に臨んだ(右から)十八銀行の森拓二郎頭取、FFGの柴戸隆成社長、親和銀行の吉澤俊介頭取=8月24日、福岡市のFFG本社

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