(2)旧五島産業汽船 運航停止 経営破綻し突然の運休

 長崎、佐世保と五島列島などを結んでいた旧五島産業汽船(新上五島町)が10月2日、全航路で突然、運航を停止した。窓口には「会社都合につき、しばらくの間運休します」と紙が張り出されただけ。運休を知らずに来た乗客は困惑し、立ち尽くした。

 原因は経営破綻だった。2015年に参入した佐世保-有川(新上五島町)航路が赤字で累積損失が膨らみ、社長が独断で手掛けた船舶仲介事業の失敗が追い打ちを掛けた。関連会社を含む負債総額は24億7千万円。旧会社は11月に自己破産を長崎地裁に申請し、破産手続き開始決定を受けた。

 折しも、五島列島に四つの構成資産がある「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が7月に世界文化遺産に登録されたばかり。交通アクセスが停滞すれば、島民の生活はもちろん、観光面で多大な影響が懸念された。

 航路復旧の動きは急ピッチで進んだ。10月10日には県内建設業者らの支援を受け、元従業員が同名の新会社を設立。九州運輸局は異例の早さで18日に事業譲渡を認可し、新会社は19日、長崎-鯛ノ浦(新上五島町)で運航を始めた。

 新上五島町は、旧会社に貸し出していた町所有の大型高速船「びっぐあーす」2隻のうち1隻を新会社にも貸し出すことを決定。新会社は11月16日から長崎-鯛ノ浦にびっぐあーすを投入して1日3往復を運航し、再開当初の乗客の落ち込みから巻き返しを図っている。

 離島航路を取り巻く現状は厳しい。新上五島町では過疎高齢化が進行。人口はこの10年で5千人減少した。運賃減収を経営努力で補おうとしても、燃料費が上昇し人手不足が続く中で、コスト削減には限界がある。九州運輸局の離島航路担当者は「今後は観光などで島外から来る人をどれだけ取り込めるかが重要になるだろう」と指摘する。

 離島にとって、船は生活を支える“命綱”。新上五島町の40代女性は「早期の航路復旧は良かった。ただ、どの船会社も島民の足である自覚を持ってほしい」と注文した。

新会社が運航を再開した「びっぐあーす」に乗り込む乗客ら=新上五島町、鯛ノ浦港(11月16日午前7時50分)

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