(1)V長崎 J1元年 最も注目された1年

 サッカーワールドカップ(W杯)、ジャカルタ・アジア大会などの国際大会で県勢が活躍した2018年。サッカーのJ1に初めて挑んだV・ファーレン長崎は、1年でJ2降格という結果に終わったが、多くのファンに夢を見せてくれた。プロ野球・広島の大瀬良大地(長崎日大高出身)は最多勝を獲得。創成館は春の選抜高校野球大会で8強入りを果たした。

 一方、秋の福井国体で、本県の天皇杯(男女総合)順位は前年の24位から41位へ大きく後退。スポーツ界の発展に尽力した功労者の訃報もあった。喜び、悲しみ、悔しさが交錯したこの1年を振り返る。

 大手インターネット検索サイト「ヤフー」が発表した2018年の検索数ランキングで、長崎県部門の1位は「V・ファーレン長崎」だった。J1への初挑戦とJ2降格、新スタジアム計画、そして監督交代…。クラブ史上最も注目された1年になった。

 中でも、国内最高峰リーグでの健闘はサッカーファンの心を熱くした。戦力で他チームに見劣りする中、引いて守る「受け身」の戦術ではなく、攻守において積極的に仕掛ける真っ向勝負を披露。地力の差を走力、組織力で補う「長崎スタイル」で、4月11日の清水戦で初勝利を挙げると、そのまま4連勝して、一時は9位まで浮上した。

 だが、チームの強みや弱点が知られ始めると、次第に勝ち星から遠ざかる。W杯ロシア大会に伴うリーグ中断期間にオーストリアで初の海外キャンプを実施。攻守でレベルアップを図ったが、7月のリーグ再開直前に主力のけがなどが重なり、8月の5連敗で一気に最下位(18位)まで転落した。以降は順位を上げられずに、1年でのJ2降格が決まった。

 最終成績は8勝6分け20敗(勝ち点30)。数字だけを見れば残念なシーズンだったかもしれないが、この1年で得たもの、失ったものをてんびんにかけてみると、必ずしもマイナスではない。

 今季まで指揮を執った高木琢也監督は退任会見で「サッカーのにおいがする街になった」と語った。プロスポーツの土壌がなかった長崎で、日常的にサッカーの話題が挙がるようになったのは、V長崎がJ1に昇格したからこそ。わずか1年だったが、これまで関心の薄かった層が勝敗に一喜一憂し、クラブを身近に感じる機会になったのは間違いない。

 J2降格に伴い、今季活躍した主力が他クラブに引き抜かれる懸念もあるが、スタメン級の選手の多くはまだ契約年数が残っており、大幅な戦力ダウンもなさそうだ。

 年明け早々には「1年でJ2優勝、J1復帰」を掲げる手倉森誠監督の下で新体制が始動する。J1での経験をどう生かすか、新しい指揮官はどんなサッカーを見せてくれるか、ファンは引き続きスタジアムに足を運んでくれるか。

 2019年もV長崎から目が離せない。

12月1日のJ1最終節を終え、サポーターと記念撮影する選手ら=諫早市、トランスコスモススタジアム長崎

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