(3)核廃絶「キーマン」来崎 高校生 平和賞候補に

 核兵器を巡る国際情勢が刻々と変化した一年。核廃絶を目指す国際的な「キーマン」が長崎からメッセージを発信し、国際会議で世界の識者や活動家らが核軍縮に知恵を絞った。高校生平和大使が初めてノーベル平和賞の候補に挙がるなど若い世代の動きも注目された。

 10月5日、長崎市内のホテル。高校生平和大使と関係者約50人がパソコンを囲み、候補に挙がったノーベル平和賞の発表の様子を見守った。受賞は逃したが、核廃絶の署名を国連に届け続けた功績は国際的に認められた。今年の平和大使を務めた長崎西高2年の徳永雛子さん(17)は「平和に関心がない同世代に考えるきっかけを与えられたのでは」と効果を語る。

 「未来は若い世代の手にかかっている」-。1月、ノーベル平和賞を昨年受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が初めて長崎を訪問。若者との対話集会で「世界中の人とつながり、核廃絶を実現しよう」と奮い立たせた。

 南北首脳会談で朝鮮半島の非核化が宣言され、6月に史上初の米朝首脳会談が実現。世界が激動する中で迎えた73回目の長崎原爆の日、平和祈念式典に現職の国連事務総長として初めてアントニオ・グテレス氏が参列。「長崎を核兵器による惨害で苦しんだ地球最後の場所にするよう決意しましょう」と訴えた。

 ただ日本政府は核兵器禁止条約に不参加の立場を堅持。政府が強調する、核保有国と非保有国の「橋渡し役」の方策は、11月に外務省が長崎で開いた有識者会議「賢人会議」でも協議されたが、目立った進展は見えない。被爆者からは核禁条約不参加の「隠れみの」と不満が漏れる。

 5年ぶり開かれた「第6回核兵器廃絶-地球市民集会ナガサキ」で採択された「長崎アピール」は対照的に、日本政府に対して核禁条約に署名し国内外の信頼を取り戻すよう求めた。被爆地から核廃絶を主導する姿勢をあらためて示した。

 長崎大核兵器廃絶研究センター客員研究員の山口響さん(42)は「被爆者がいなくなったときに、世界にとって被爆地が注目の対象であり続けられるのか懸念がある」と指摘する。その意味で、高校生ら次世代の動きの活発化は今年の収穫の一つと言えよう。

ノーベル平和賞の発表の様子を見守る高校生平和大使と関係者=10月5日、長崎市筑後町のホテルセントヒル長崎

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