パソコンがなければ、つくってしまおう【プログラミング言語の選びかた第3回】

前回は実際にどのような言語を選べばいいのかを紹介しました。ではプログラミングを勉強するためにパソコンを買う必要はあるのでしょうか?実は、パソコンがなくてもプログラミングはできます。数千円からはじめられる入門用の小さな機械があるのです。

パソコンなしでも数千円からプログラミング環境が整う

もうすでに子どもがパソコンを使っているなら問題なのですが、自宅にパソコンがないこともあるでしょうし、あるとしても仕事用のパソコンを子どもに使わせるわけにはいかない、という場合もあるでしょう。

最近では2~3万円で入門用のノートパソコンが買えるので、そうしたものを買い与えるのもひとつの方法です。しかしプログラミングすることだけが目的なら、パソコンなしでも大丈夫。「マイコンボード」と呼ばれる小さな機械を使う方法があります。

基板がむき出しのマイコンボード

マイコンボードはとても小さなコンピュータ。パソコンに比べてできることは少ないのですが、数千円という安さと電源を入れるだけで使えるのが魅力です。

マイコンボードは、もともとは、電子工作で使う部品です。そのため、ライト(LED)、モーター、ブザー、スイッチ、各種センサーなどが接続できるように基板がむき出しになっていて、ピンが出ているところに、そうした部品を接続できます。

むき出しで無造作なので難しいように見えますが、心配ありません。こうしたピンになにもつながなくても、電源さえつなげれば使えるので安心してください(どうせなにも接続しないのなら、専用ケースに入れて使うのがベストです)。

世の中にはたくさんのマイコンボードがありますが、キーボードとテレビをつなぐだけですぐにプログラミングできるものがあります。そうしたものこそ私たちが求める「簡単パソコン」です。

マイコンボードにキーボードとテレビをつなげばプログラミングをはじめることができる

IchigoJamとRaspberry Piで簡単プログラミング

簡単にプログラミングできるマイコンボードとしてお薦めしたいのが「IchigoJam(イチゴジャム)」と「Raspberry Pi(ラズベリーパイ。略称ラズパイ)」です。簡単にすぐはじめたいなら「IchigoJam」、いろいろやりたいなら「Raspberry Pi」がお薦め。

IchigoJam

BASICというプログラミング言語でプログラムを作れる手のひらサイズのマイコンボード。日本のjig.jpが開発したもので、小中高生向けの授業やワークショップなどでもよく使われています。

プログラミング環境以外の余計なものが入っていないのが特徴です。初期設定が必要なく、電源を入れるだけですぐにプログラミングをはじめることができます。インターネットにつなぐ必要もないため、セキュリティ的にも安全。お子さんがこっそり有害サイトを見てしまうというような心配もありません。

Raspberry Pi

Raspberry Piは、とても小さなパソコン。イギリスのラズベリーパイ財団というところが、教育用に作ったコンピュータです。

小さいながらも機能は本格的。インターネットにも接続できますし(接続せずに使うこともできますが、接続しないとソフトのインストールやアップデートに制限があります)、ワープロソフトやグラフィックソフトなど、パソコンでよく使うようなソフトも使えます。プログラミング言語も、スクラッチをはじめPythonやJavaScriptなど、とてもたくさんのプログラミング言語のなかから、好きなものを選んで使えます。

IchigoJamと違って、電源を入れてすぐにプログラミングというわけにはいかず、最初の設定やコマンドを入力したりする必要がありますが、パソコンと同様に「なんでもできる」のがメリット。子どもに専用パソコンを与えたいけど、本格的なパソコンを渡すのはちょっと、というときにお薦めです。

どこで買えるの?

IchigoJamやRaspberry Piはマイコンボードなので、普通のパソコンショップでは売っていません。電子工作を扱っているお店で購入します。東京の秋葉原や大阪の日本橋などのパーツショップに行けば購入できますが、通販などでも購入できます。

IchigoJam

下記URLの取扱店舗で入手できます。キーボードやケーブルなど一式揃った「スターターキット」もあるので、それを選ぶのもよいでしょう。なお、IchigoJamにはハンダ付けが必要な「半完成品」と、買ってすぐに使える「完成品」があります。間違えて半完成品を選ぶと、部品をハンダ付けしないと使えないので注意してください。

https://ichigojam.net/get.html

Raspberrry Pi

下記のURLに、入手できる場所が記載されています。Amazon.co.jpなどでは、必要なもの一式が揃った「スターターキット」も用意されているので、それを選ぶのもよいでしょう。

なお、IchigoJamもRaspberry Piも、スターターキットでなく単体で購入した場合、簡単な説明書しか含まれていません。はじめてなら、なにか入門書も一緒に購入することをお勧めします。

プログラミング言語の選び方をまとめると

これまで3回に渡って、どのようなプログラミング言語があり、どう選べばよいのかを説明してきました。これまでを振り返ってまとめると、次のようになります。

IchigoJamはプログラミングすることが前提のものなので、電源を入れればすぐにプログラミングできます。しかしそれ以外は、「プログラミングするためのソフト」などのインストールや設定が必要です。

では、パソコンでプログラミングするには、どのようなソフトを用意してどのようなものをインストールしなければならないのでしょうか。次回は、そうした具体的なプログラミングのやり方を説明していきます。

コラムタブレットやスマホだけでプログラミングできないの?
タブレットやスマホでプログラミングすることもできます。たとえば、学校の教育現場でも採用されている合同会社デジタルポケットの「ビスケット」。このアプリをタブレットやスマホに入れると、ちょうどスクラッチのようなビジュアルプログラミングをはじめることができます。ストアで配布されているアプリなのでインストールは簡単。手軽にプログラミングをはじめたいなら、こうしたものを試してみるのもよいでしょう。

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