日々に刺激を与えてくれる3台のフォルクスワーゲンをイッキ乗り!

輸入車のなかでもフォルクスワーゲンは、シンプルで堅実なイメージがあり、あまり「色」を感じさせないメーカーではないだろうか。だからこそ好きだという人もいれば、すこし保守的だと思う人もいるだろう。今回はゴルフやパサートなどのかっちりしたモデルから少々路線を変えて、ちょっぴり日々に刺激を与えてくれそうなクルマたちを紹介したい。

VW ザビートル

ついに生産終了が決まってしまったザ・ビートル

The Beetle Design Meister

2019年にビートルが生産終了すると聞いて、驚きと寂しさを感じた人はきっとたくさんいただろう。かくいう私も、ビートルは中学生の頃の憧れのクルマで、いつかは乗りたいと思っていたモデルだった。当時は「New Beetle」という名前で、いまよりもまるまるとしたフォルムが可愛らしかったことを思い出す。2012年のフルモデルチェンジで名前も「The Beetle」へと名称を変更し、ビートルらしさはそのままに、丸みが取れてすっきりとした現代風のデザインとなった。

今回試乗したのは特別仕様車のひとつ「The Beetle Design Meister」で、人気の装備を取り揃えたモデルだ。ほかにもスポーティなイメージを強調した「R-Line Meister」、2L直4ターボエンジンを搭載する「2.0 R-Line Meister」が設定されている。

「Design Meister」には、専用の17インチアルミホイールやバイキセノンヘッドライト、パドルシフトなどが備えられ、インテリアはボディと同色であり、運転席に座るだけでちょっとワクワクする。しかも、試乗車のボディには特別色である「ハバネロオレンジメタリック」が塗られており、曇り空でもパッと輝く明るい色がなんとも素敵。暖色系は女性が似合うものだと思っていたが、この「ハバネロオレンジメタリック」は意外や意外、年配の男性にもよく似合う。カメラマンさんがクルマを動かしているときに「まるで愛車みたい」と思ったほど。「人生最後のクルマとしてどこかのおじいちゃんが乗っていたらめっちゃかっこいいだろうなぁ」と想像してしまった。

VW ザビートル

フォルクスワーゲンのモデルは、どこを触っても「節度」という言葉が思い浮かぶことが多いが、ビートルはそこを上手く抜いてあるように感じた。ハンドルを切っても正確にピタッと決まるのではなく、ふんわりそれなりに曲がっていく。エンジンは1.2L直4ターボ(105ps/175Nm)ながらなかなかパワーがあって、アクセルをちょっと踏み込むとズドンと加速するので思わず「速っ」と呟いてしまった。よくアニメなどで出てくるような、車体が大げさに伸びて跳ねるように加速したり、ブレーキを踏むとギューッと縮んだりするクルマが思い浮かぶ。それらが決して不快ではないし、むしろひとつのキャラクターとして成り立っているところがいいなと思った。車両全体に溢れるビートルらしい雰囲気が、きっとオーナーになったらより愛着が湧いてしまう部分なのだろう。販売終了はとても寂しいお知らせではあるが、その愛くるしい表情を見ていると、またどこかで会えるような気がしてくるのが不思議だ。いまフォルクスワーゲンが行っているキャンペーンと同様、「See You!」という明るい気持ちでビートルを降りた。

峠道でやっぱり気持ちいい元気なコンパクトハッチ

Polo GTI

フォルクスワーゲンのコンパクトハッチであるポロは、2018年にフルモデルチェンジを迎えた。ポロとして「MQB」プラットフォームを初採用し、日本では3ナンバーになるなどボディサイズがひと回り大きくなっている。標準車に試乗したときには、よく巷で言われている「ミニゴルフ」という言葉がたしかにしっくり来ると思った。これまでのポロはゴルフのようなワンランク上の良品感をすぐには感じられなかったが、新型では乗った途端にはっきりと実感することができたのだ。ただその分、ちょこちょこと街中を軽快に走り回るポロならではの良さは少しだけ薄まったような気もして「その役目はup!に譲ったのかなぁ」と思っていた。しかし、今回ポロGTIに乗ってその考えはひっくり返った。

GTIと聞くとついついドライビングモードを「スポーツ」にしたくなってしまう。ポロGTIももちろん例外ではなく、最初からすぐに「スポーツ」モードに切り替えた。ドライビングモードを「スポーツ」にすると、エンジン/シフトプログラムに加えて、ステアリングトルクやアクセルレスポンスも変更される。スイッチを入れるとエンジンが回転数を上げてグオンと唸り、早く走り出したい気持ちに火がつく。

GTIのようなスポーツモデルはマニュアルで乗りたい方も多いかもしれないが、今回ポロGTIに設定されるトランスミッションは6速DSGのみ。私も普段マニュアル車に乗っているので、ATはどうだろうと思っていた。しかし、少し走ってみると気持ちいいところまで引っ張って変速するタイミングは絶妙で、ブレーキを踏むと自動でブリッピングしながらシフトダウンしてくれるので、すぐ「すみません、全然これでいいです、むしろこれがいいです!」と思い直した。パドルシフトもついているのでもちろん自分で自由に変速することもできるが、峠道をちょっと走った限りでは、シフト操作はポロにお任せしてもまったく不満はなかった。

VW ポロGTI

エンジンは200ps/320Nmを発生する2L直4ターボを搭載していて、ポロの車体に対してパワーの不足はまったくナシ。足回りは引き締まっていて硬めではあるが、運転している分にはすぐ慣れてしまった(後席に座っていた方々はちょっと長距離はつらいかもとのことだったが……)。峠道を右へ左へ走っていくと、ハンドリングがすぱっすぱっと決まるのが気持ちいいのなんの。パワーが潤沢にあるだけではなく、やっぱり車体が軽い!市街地で走ったときには「ミニゴルフ」の印象が強かったが、峠道にきて軽快なフットワークを目の当たりにして「やっぱり、これ、ポロだ!」と確信した。大きくなったボディもこのときばかりはキュッと体を縮こめて、ピンボールみたいにコーナーをクリアしていく。これには「楽しい!」のひとこと。一旦走り終えて山を下って行くと、あまりに私が良い顔していたのか、取材クルーに「もう一回行ってきてもいいよ(笑)」と言われてしまった。

VW ゴルフトゥーラン

乗りやすくて経済的な本命ミニバン

Golf Touran TDI Highline

フォルクスワーゲンのミニバン、興味はあるけど試乗までしたことはないという人は多いのではないだろうか?実は私もトゥーランに乗るのは今回が初めて。ミニバンの便利さで言えば日本車に勝るものはないだろうと思っていたが、トゥーランは使い勝手も良いことに驚いた。5人乗りから7人乗りまで幅広く使えるのはもちろん、2列目、3列目、さらに助手席まで倒すこともでき、完全なフルフラットにすることもできる。さらに「インテグレーテッドチャイルドシート」というそのままチャイルドシートとして使えるオプションのシートなども用意されている。また、室内の開放感に加えて子供にも大人気の電動パノラマスライディングルーフや、アウトドアで日よけになるサイドオーニングなど、用途によって選択できる多数のオプションがあるのも魅力的だ。唯一ないものと言えばスライドドアくらいだろうか?そして、ガソリンエンジンのほかに、今回試乗した燃費の良いディーゼルエンジンが選べるのも大きなポイントだろう。

トゥーランに搭載される2L直4ディーゼルターボエンジンは150ps/340Nmを発生し、トランスミッションは6速DSGが組み合わされる。これが低速からもりもりとパワーが出るので、7人フル乗車でも余裕を持って運転ができそうだと思った。ミニバンにありがちなのは、たくさん乗れて便利でも、実は運転がしづらいクルマも多いということ。ハンドルを切ってからすこし遅れて反応するなど、思ったとおりにクルマが動いてくれないこともあるので、より女性やお母さんたちに運転に対しての苦手意識を植え付けているのではないかと思う時がある。

VW ゴルフトゥーラン

それを考えると、ゴルフをベースとしているトゥーランは運転のしやすさは抜群。自分に寄り添うようにクルマが動いてくれると運転していて疲れにくいし、安全にもつながるはずだ。私の経験からすると、運転が苦手な女性は自信がないことに加えて、合わないクルマに乗ってさらに余裕がなくなって視野が狭くなってしまう傾向がある。これからもしミニバン購入を検討するときには、一度は奥さまとフォルクスワーゲンに試乗に行ってみると良い発見がある……かもしれない。少なくとも私にも家族ができたら、またもう一度みんなで一緒に乗りに行って見たいと思わせてくれるクルマだった。

[筆者:伊藤 梓/撮影:茂呂 幸正]

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