五島支局/増える移住者の力生かせ

 五島市が数年前から進める移住支援策に一定の成果が表れ始めた。4月以降のU・Iターン者は131人(12月21日時点)と県内トップクラスで、既に昨年度の129人を超えた。8割を40代以下が占める。
 国境離島新法による雇用拡充で働き口が増えたことや、移住者対象の奨学金返還助成など独自政策が奏功した形だが、課題もある。
 ハード面は住居の確保。市は市内に多数ある空き家を活用する考えだが、「改修や片付けをせず入居できるのは数軒」。空き家を所有する市民の協力が得られていない現状がある。実際に家がなく移住を断念したケースもあるといい、市は10月に空き家の調査などをする専従職員を配置した。
 もともと地元に暮らす人たちとの「融和」も重要。現実に一部から「移住者にだけ手厚い」との声も漏れ聞こえる。だが、大きな決断の末に五島へ来た移住者たちは積極的に行動し、島に新しい風を吹き込んでいる。複数の移住者が「地元の人とも深く関わっていきたい」と望んでいる。
 “よそ者”の新鮮な視点を生かし、島の活性化を図れるか。今後も行政はもちろん、全島民の覚悟と熱意が試される。

■主なニュース

 ▼「久賀島観光交流拠点センター」開設▼五島列島ジオパーク構想のテーマとロゴ決定▼「奈留島の江上集落」と「久賀島の集落」が「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産として世界文化遺産登録▼山本二三美術館オープン▼廃校を活用したグランピング施設開業▼MTG(名古屋市)がツバキ関連企業「五島の椿」設立▼カネミ油症発覚50年の記念事業として式典や市民講座開催

五島市の移住支援策などを紹介するパンフレットなど

© 株式会社長崎新聞社