(7)広島・大瀬良 セ投手 2冠 苦難を乗り越え飛躍

今季、セ・リーグの最多勝と最高勝率の2冠に輝いた大瀬良=広島市、マツダスタジアム

 プロ野球広島の右腕、大瀬良大地(長崎日大高-九共大)がセ・リーグで最多勝(15勝)と最高勝率(6割8分2厘)の2冠に輝いた。チームのリーグ3連覇に貢献したほか、夏のオールスター初出場、11月の日米野球での好投など、シーズンを通して活躍を続けた。
 2014年の入団1年目から10勝を挙げて新人王を取ったが、その後は順風ではなかった。15年は勝ちに恵まれず、6月から中継ぎに配置転換。16年も開幕前に肘を痛めて出遅れた。7月に先発復帰したものの振るわず、その後は救援へ。日本シリーズでも敗戦投手になるなど、2年連続で3勝にとどまった。
 転機は昨年。再び先発を任されて1年目以来の10勝をマークした。8月の阪神戦では打者として死球を受け、相手投手の藤浪晋太郎に「大丈夫」と笑顔を向けた人間性が話題に。「いい人はユニホームを脱いだところでやってくれたらいい」と緒方孝市監督には厳しい言葉も掛けられたというが、大瀬良の人柄を象徴する出来事だった。
 だが、この年のクライマックスシリーズは救援に回り、日本シリーズ進出も逃した。また味わった悔しさ。「あれが今年の始まり」だった。
 迎えた今季。二段モーションを取り入れ、5月に3年ぶりの完投と初の無四球完投をマーク。月間MVPを初受賞すると、6月には連勝を7まで伸ばし、両リーグ最速で10勝に到達した。後半は好投が報われない試合もあったが、さらに勝ち星を重ねた。
 本県出身者の最多勝は下柳剛氏(瓊浦高出身)が05年に阪神で達成して以来の快挙。年俸も1億4500万円(推定)と2倍超の大幅増で契約更改した。
 県勢では大瀬良の飛躍が目立つ1年だったが、高校時代に大瀬良と投げ合い現在はチームメートの今村猛(清峰高出身)、広島を倒して2年連続日本一となったソフトバンクの川島慶三(佐世保実高出身)らも各球団で欠かせない存在だ。
 大瀬良が口にする言葉に「長崎の人のために」がある。こうした思いはきっと、古里に元気を、子どもたちに夢を与えてくれる。来年も、一人でも多くの本県出身選手が同じような気持ちで輝きを放ち、次世代の刺激になることを願いたい。

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