1970年代のATGに新時代をもたらした『津軽じょんがら節』と『日本人のへそ』が初Blu-ray化決定

日本アート・シアター・ギルド(ATG)の旧作を発売している“ATGライブラリー”シリーズの最新リリースとして、『津軽じょんがら節』(1973年/斉藤耕一監督)、『日本人のへそ』(1977年/須川栄三監督)の2作品が最新のHDデジタルリマスターで3月13日(水)に発売されることが決定した。両作品とも初Blu-ray化となる(発売・販売元:キングレコード/DVD同時発売)。

1960年代に発足し、既存の日本映画とは一線を画し、前衛的な芸術作品や野心的な青春映画を中心に傑作の数々を世に送り出した伝説の映画会社「日本アート・シアター・ギルド(ATG)」。

今回最新のHDデジタルリマスターで初Blu-ray化が実現したのは、1970年代のATGにおいて記念碑的な2つの作品だ。

1973年に公開された『津軽じょんがら節』は、惜しくも今年この世を去った名女優・江波杏子を主演に据え、荒々しい冬の日本海を背景に、都会から逃げてきた男女の揺れ動く心のさまを情感豊かに描き出した、斉藤耕一の代表作。

1970年代の津軽地方の土着風俗と都会の風をまとった若者の対比が残酷までに鮮烈な作品で、津軽三味線の巨星、故・初代高橋竹山による津軽三味線の音色をはじめ、随所に配された郷土色溢れるモチーフが哀感を奏でながら作品を盛り上げる。

1977年に公開された『日本人のへそ』は、井上ひさしの実質的な演劇界デビュー作となる戯曲を映画化。

岩手の極貧の村から集団就職で上京した中学生が、やがてストリッパー“ヘレン天津”になり、代議士の愛人まで上り詰めるまでの人生をコミカルに描く。

主役の緑摩子、スケコマシのテキヤ役の美輪明宏のほか、ハナ肇、佐藤蛾次郎、東てる美などが出演。小劇場の舞台で行なわれる吃音矯正の告白劇から始まり、ドンデン返しの連続のストーリー展開も見どころだ。

タイプが違う両作品だが、『津軽じょんがら節』は1973年の正月映画として公開され、当時のATGの興収記録を塗り替え大ヒット。第47回キネマ旬報ベスト・テンで第1位を獲得したほか数々の賞を獲得し、ATGの新たな路線が始まったといわれる作品。

『日本人のへそ』はATG初の喜劇であり、初のミュージカル。

両作品ともその後の日本映画に多大な影響をあたえたATGの歴史において、70年代の転換点となった作品であり、長らくBlu-ray化が望まれていた。

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