ボルボ 新型XC60 T6 AWD R-Design & D4 AWD R-Design 試乗|世界中でイチバン売れている理由を探る

ボルボ XC60 R-Design

大幅に洗練(Refinement)されたR-Design

世界で一番売れているボルボであり、昨年同社としては初めて日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄冠を勝ち取ったXC60(ちなみに今年もXC40が選出され、ボルボはCOTY二連覇を果たした)。

そのバリエーションにおいて「R-DESIGN」は、XC60の魅力や本質をスポーティなトリムで演出するモデルとなっている。

ちなみに「R-DESIGN」の“R”が意味するのは、「Racing」ではなく「Refinement」(洗練)。よってその変更点はエンジンや足回りのスープアップではなく、内外装の洗練にある。

具体的にそのリファインされた内容を見てみると、外観ではフロントグリル、サイドウインドウトリム、ドアミラーカバー、リアバンパー下部(グロッシーブラックトリム)を専用パーツで“ひと巻き”し、19インチ/21インチふたつのホイールを用意。

ボルボ XC60 R-Design

インテリアはその特徴的なスカンジナビアンデザインのインパネトリムやコンソールパネルをメタルメッシュ・アルミニウムパネル化し、ここに黒基調のレザーステアリングとヌバック(起毛革)×ナッパレザー・コンビのシートで引き締めている。

その印象はシンプルながら暖かみのある「インスクリプション」のウッド系インテリア×レザーシート内装に比べ、モノトーンの色合いがソリッドさを引き立てていた。ボルボいわく「高度なテクノロジーを操る戦闘機のコクピット」がイメージなのだそうだ。

そんなRデザインが設定されるのは「T6 AWD」と「D4 AWD」の2グレード。ここにT5とT8が加わらないのは、ツインエンジンとしてモーターを搭載するT8が最上級ラグジュアリーモデルであり、Rデザインはスポーティさを強調するバージョンだからT5とは差別化を図った、ということだろう。

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ボルボ XC60 R-Design

見た目だけではなく乗り心地も走りも進化

T6 AWDを走らせて「おやっ!?」と思ったのは、しかしその見た目以上に走りの洗練度合いが増していたことだった。

私はXC60が日本導入されたときに、その乗り心地をあまり高く評価していなかった。確かにその走りはミドル級SUVらしくスポーティで、高い重心を巧みに抑えながらSUVとしてはかなりキビキビとしたハンドリングが与えられていた。しかしその代償なのかマルチリンクを搭載するにも関わらずリアサスペンションの動きが渋すぎ、不整地では横方向の揺れや縦方向の突き上げが、顕著に感じられたからである。

XC60はXC90と同じく、荷室容量を稼ぎながら走安性を確保し、なおかつ軽量化を推し進めるソリューションとしてグラスファイバー製複合素材を使ったリーフスプリングを搭載している。当初はこれがロール時の質感に大きく影響しているのかと思っていた。しかしRデザインとなったXC60の乗り味は、まさに初期モデルから大きく洗練を帯びていたのである。

前述の通りRデザインの変更点は内外装であり、ボルボとしても足回りの変更はアナウンスしていない。しかし突き上げ感や横揺れ感は少なくとも前席からは感じられなくなり、そのハンドリングさえもが大人っぽい穏やかな操作性になった。

特に255/40R21という大径タイヤにも関わらず、いやむしろこの方が突き上げに対する抑えを効かせていたのには驚いた。

ボルボ XC60 R-Design

XC60そのものが初期ロッドからブッシュコンプライアンスやダンパーの減衰力設定に改良を施されたのか、Rデザインとしての専用設計が密かに与えられたのかはわからない。しかし前席で乗る限り、その乗り心地はとても良好である。

ちなみに後部座席には、まだ少し突き上げ感があるようだ。それは同行したカメラマン氏からの証言でわかった。ちなみにRデザインはその走安性と路面追従性を高めるべくリアにモノチューブダンパーを搭載しており、そのガス圧が新車時状態ではハッキリ現れるのだろう。総じてXC60はリアサスペンション周りのフレーム剛性が低く、これをブッシュやダンパー、リーフスプリングで補わないといけないのかもしれない。ともあれ現状は、そのバランスが空荷状態でもかなり良いところまでバランスしている、と言えるだろう。

ボルボ XC60 R-Design

T6とD4の価格差は悩ましい45万円

こうしたシャシー特性に対し、T6の動力性能はマッチング抜群にいい。

400Nmの最大トルクを8速ギアで巧みに維持し続ける走りは素晴らしくトルキー。そしてそのままアクセルを踏み込み続ければ、320psのパワーを発揮する5700rpmまでガソリンエンジン特有の伸びやかさでエンジンが回り続ける。

そのスカッとキレ味のある動力性能に対して、ハンドルから手を離さず素早い変速が可能となるパドルシフトの設定もありがたい。キックバックに頼らずミドル級ボディを快適に加速できるし、エンジンブレーキを自在に引き出してスピードコントロールすることが可能となるからだ。

21インチタイヤはXC60が持つ鋭いコーナリング性能を上乗せするというよりは、ロードホールディング性を高めるのに一役買っていた。結果として操作に対する反応が忠実になり、ボルボはここに上質なスポーティさを表現しているのだと理解した。

対してD4には19インチタイヤが装着されており、ディーゼルユニットの堅実な走りと、そのゆったりさ加減が際立った。235幅のトレッドは太すぎず細すぎず、55扁平のエアボリュームも柔和な乗り味とシッカリ感を絶妙にバランス。そしてガソリンモデル以上にその乗り心地が、平和に保たれている。

今回は上り坂が急な箱根ターンパイクでの試乗だったから、190psのパワーはT6に比べて確かに迫力不足だ。しかしそのトルクはT6と同じ400Nmを発揮し、8速ATのギアリングも全く同じだから、ゼロ発進からの出足や瞬発的な加速力は十分以上の実用性があって頼もしい。そして平坦な高速道路であれば、余裕をもってロングツアラーの役目を果たしてくれると予想できた。

ステアリングレスポンスは終始穏やかだがインフォメーションは濃密。旋回中のブレーキングに対してもスタビリティに破綻がなく、穏やかに減速してくれる部分には、ボルボらしい高い安全性を感じることができる。

よってRデザインを名乗るには少々大人しすぎる気もするが、D4 AWDベースのR-DESIGNは、もっともボルボのイメージに近いモデルと言える気がした。

ボルボ XC60 R-Design

ちなみにT6とD4の価格差は45万円しかない。絶対的な価格として679万円と724万円の差は大きいが、どちらにするべきかは非常に悩ましい。

日本にはD5の設定がないから、ディーゼル派ならその差額を使って、D4にポールスターのECUチューニングができたりしたら面白いのだけれど。

[Text:山田 弘樹/Photo:小林 岳夫]

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