(7)潜伏キリシタン世界遺産に 曲折経て悲願の登録

 「よーし」「やったー」-わき起こる拍手と歓声、そして笑顔。中東・バーレーンで開かれた国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会で6月30日、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本の12資産)の世界文化遺産登録が決定した。県庁と構成資産がある6市2町の会場では、約2千人がインターネット中継で「人類の宝」になった瞬間を見届け、喜びを分かち合った。
 2001年に民間の有志が「長崎の教会群を世界遺産にする会」を設立してから17年。13年には文化審議会が世界遺産推薦を承認しながら、菅義偉官房長官の政治裁定によって後続候補の「明治日本の産業革命遺産」(15年登録)に先を越されたり、16年にはユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)に内容見直しと推薦取り下げを促されたりと、紆余(うよ)曲折を経ての悲願の登録だった。
 「潜伏キリシタン」とは、17~19世紀の2世紀以上に及んだ禁教令の下、仏教や神道を装い、ひそかにキリスト教への信仰を続けた人々のことだ。遺産は12資産のうち9資産が信仰を継続していた集落や集落跡で、「景観から歴史を読み取る新しいタイプの世界遺産」(服部英雄・県世界遺産学術委員会委員長)が誕生した。
 世界遺産登録後の7~11月に、無人島の「中江ノ島」(平戸市)を除く11資産を訪れた人は前年同期より64%増の約43万8千人。特に「春日集落」(同市)は夜間のライトアップイベントなどが功を奏し、前年同期の22倍となる約1万3千人が訪れ、地域が活性化した。
 一方、10月には南島原市が文化庁に無断で「原城跡」の一角に砂利を敷き、駐車場として利用していたことが発覚。世界遺産の根幹である保護意識が問われた。
 過疎高齢化が進む地域の資産が多く、保全の担い手確保が大きな課題だ。県世界遺産課の村田利博課長は「世界遺産登録はゴールではなく、新たな取り組みのスタート。保存と活用を両立させていかなければならない」と今後を見据える。

世界遺産登録が決まり、大勢の観光客が訪れた構成資産の大浦天主堂=7月1日、長崎市南山手町

© 株式会社長崎新聞社