COP24閉幕、パリ協定始動へ求められる野心的目標

COP24報告セミナー「世界の潮流と日本のゆくえ―さらに強まる2℃/1.5℃目標の実現に向けたコミットメント―」

国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)が15 日ポーランドで閉幕した。地球環境戦略研究機関(IGES)は26日都内で、COP24報告セミナーを開き、「世界共通のルールブックに合意できたことが最大の成果だ」と述べた。パリ協定は2020年から適用の段階に入るが、同協定の目標と各国の行動目標には、大きなギャップが残っている。各国の削減目標をいかにして高めるか、「野心の向上」が課題に残った。(辻陽一郎)

ノンステートアクター(非国家主体)としてCOPに参加した気候ネットワーク理事兼CAN-Japan代表の平田仁子さんは「ルールブックは途上国に柔軟性を持たせつつ、相互に確認してやり遂げることができた。ゴールは明確にある。今後はいかに早く向かっていくかという議論に入った」と語った。

実施の段階で焦点となってくるのが、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示した「1.5℃特別報告書」だ。

世界の平均気温が産業革命前に比べ1.5℃上昇した世界の姿を示した報告書では、もし2度上昇すると、サンゴ礁の99%死滅や、地中海地域・南アフリカで干ばつが発生するリスクが高まるなどと指摘されている。1.5℃にとどめるには、2030年までにCO2排出量を10年比で約45%減らし、50年前後に実質ゼロにする必要性を示している。

IPCCインベントリタスクフォース共同議長の田辺清人さんは「科学者からのメッセージは明確。COPでは、あなたたちが行動する番だと出したが、野心の向上に結びつかなかったことが残念だ」と述べた。

COP24の成果文書では1.5℃特別報告書は弱い扱いになってしまっている。

IGES気候変動とエネルギー領域リサーチリーダー田村堅太郎さんは「1.5℃と2℃どちらにするのかで大きな違いがある。1.5℃ならば2050年にはゼロにするため、今すぐにでも投資サイクルを変えていかないといけない。各国の2030目標が今のままなら届かない。目標の引き上げが急務だ」と語った。

一方で、独自に国別目標(NDC)を引き上げる動きも出てきているという。

2050年までのネットゼロ実現に向けて、ノンステートアクターも盛り上がっている。ロンドンや横浜市などは、2030年カーボンニュートラルを宣言している。企業版2度目標のSBT認定でも、これからは2℃から1.5℃に整合する目標の認定を宣言した。

平田さんは「世界の潮流を国内の議論にしていくことも重要。各界にアクターが出てきている。政府が動かないからと立ち止まらずに、今、行動しないといけない」と意気込んだ。

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