ずっと、心待ちにしていた。連載時に何度も読んで、連載が終わってからも時々読み返していたあの漫画が、ついに単行本となったのだ。
「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載されていたこの作品は、ゆきちゃんとおかあさんの日々を描き留めたみじかいお話。遠足、夏休み、友達とのおしゃべり、ケンカ、おやつ、犬と猫、おかあさん、そしておとうさん……。誰しもにあったような、ずっと昔の出来事が、今日描いた絵日記のように鮮やかに描かれている。
ゆきちゃんは、おかあさんとふたり暮らし。おとうさんと三人で会うこともあるから、なにか理由があって一緒に暮らせないみたい。どうにもならないことと、どうにかなることの間で、ゆきちゃんは毎日よく食べ、よく寝て、よく笑いよく泣き、毎日を過ごしている。
印象的なお話があった。ゆきちゃんが犬を飼いたいとおかあさんに真っ赤な顔で駄々をこねたときのことだ。
「あんでだめなの!」涙ながらに訴えるゆきちゃんにおかあさんは、「ワンちゃんと暮らすってたいへんなの」「ここに一人でいたらかわいそうでしょう」と静かに諭す。
「ここに一人でいたらかわいそう」、それを痛いほど知っていて、それでもこの暮らしを選んだおかあさん。泣くもんかとくちびるをぎゅっと結び、まっすぐ前を、ゆきちゃんを見つめている。
やさしく、つよく、おもしろく。作品を連載していた「ほぼ日」が、行動指針として掲げているこの言葉。ゆきちゃんとおかあさんの日々は、ページをめくるたびに、わたしが大事にしたかったことを思い出させてくれる。
思い付いたときにひとつ、職場の掲示板に作品のコピーを貼ろうかな。仲間にそっと、教えたくなるお話だ。
(ほぼ日 1000円+税)=アリー・マントワネット