レッサーパンダの婚活センター 絶滅危機に立ち向かう

By 関かおり

 動物園の人気者レッサーパンダ。しかし近年、野生のレッサーパンダの生息数は急速に減少し、絶滅の危機にひんしている。静岡市の日本平動物園は、国内で飼育されているレッサーパンダの全データを把握、繁殖の司令塔とも言える「婚活センター」の役割を担っている。同園の担当者は「かわいらしい姿だけでなく保全活動にも関心を持ってほしい」と話している。

 日本で一般的に知られているのは「シセンレッサーパンダ」。世界で349頭が飼われているが、そのうち254頭が日本の施設で飼育されている。しかし野生のレッサーパンダの生息数は現在、約2500~1万頭と推定されており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでⅠB類(絶滅危機)に指定されている。これは「その動物種の3世代(あるいは10年間)において、生息数が70%減少した」ことに当たるカテゴリー。背景には生息地の森林の開発や毛皮を狙った密猟があるという。

 同園は日本動物園水族館協会(JAZA)が任命する種別計画管理者の獣医が所属し、繁殖の司令塔となっている。日本で飼育されているレッサーパンダの全頭を把握し、血縁や相性を考慮してカップルを決定。動物園を移動させて、繁殖期の同居という形でお見合いをさせている。中にはうまくいかないペアもいるが、2013年~18年まで6年連続で自然繁殖に成功。ことし7月には同園で双子のレッサーパンダが生まれた。

 同園では現在9頭を飼育。05年に二本足で直立する姿で人気を集めた千葉市動物公園の「風太」の出身地でもある。孫のスミレは同園で飼育されており、祖父の運動能力を受け継いだのか、15年には脱走騒動を起こして話題となった。

 ことし12月には「レッサーパンダの聖地宣言」を行った。レッサーパンダの魅力や現状を伝えるイベントを開いたり、オリジナルグッズを販売したりして聖地としてアピールする。グッズの売り上げの一部は保全団体への寄付に当てられるといい、担当者は「レッサーパンダを絶滅させないためには、生息地の保全と動物園の活動が重要。今後、来園者にもそれを伝えてきたい」と話している。 (共同通信=関かおり)

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